問い合わせメールの返信をAIに下書きさせる型。抜けと作り話を機械で見つける

2026-09-21AIの使い方

返信の下書きをAIに作らせたとき、起きる間違いは2種類しかない。聞かれたことに答えていないのと、原文にない数字が入っていることだ。

どちらも読んで探すより、数えたほうが早く見つかる。3点の問い合わせに対する返信案を検査したら、片方で論点が1つ抜けていて、原文にない数字が3つ出た。

以下の検査は、2026年9月21日にMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で実際に計算した。問い合わせと返信案は、検査の動きを確かめるために自分で作ったものだ。

文として通ってしまうから見つからない

問い合わせが3点あっても、メールとしては1つの流れで書かれている。返す側も1つの流れで返すので、途中の1点が落ちても文章としては成立する。

数字も同じだ。それらしい金額や日付が入っていれば、文は通る。読み返しても違和感が出ない。むしろ、具体的な数字が入っているほうがきちんとした返信に見える。

機械は文の流れを見ない。質問の数と論点の語を数えるだけなので、落ちていれば必ず出る。人の目と機械の目で、得意な場所が逆になっている。

質問の数を先に数える

検査の1本目は、問い合わせの中に質問がいくつあるかを数えることだ。返信を書く前にやる。

問い合わせを1文1行に分けて貼り、質問の行に印を付ける。

=IF(SUMPRODUCT(--ISNUMBER(SEARCH({"でしょうか","ですか","かどうか"},A2)))>0,"質問","")

SEARCHを配列で渡すと、複数の語をまとめて探せる。ISNUMBERで見つかったかどうかを真偽に変え、SUMPRODUCTで数える。

手元の例では3件と出た。単価のこと、納品までの日数のこと、支払の期日のこと。この3という数字を先に持っておく。

次に、論点の語を1つずつ返信の中に探す。

=IF(COUNTIF($返信の範囲,"*"&C2&"*")>0,"触れている","抜け")

*で挟むと部分一致になる。単価、納品、支払の3語で試したら、支払だけが抜けと出た。

原文にない数字を全部挙げる

2本目の検査は数字だ。返信に出てくる数字のうち、問い合わせの原文になかったものを全部挙げる。

条件なしで頼んだ返信案では、11000、10、15の3つが出た。11,000円という単価と、10月15日という納品日だ。どちらも原文にない。

このうち単価は、こちらの社内の情報から来ているなら正しい。納品日のほうは、どこから来たのか分からない。原文には日数を聞く文しかなく、日付は一度も出ていない。

型に沿って頼んだ返信案でも、原文にない数字は3つ出た。14営業日という日数と、9月25日という回答の期限だ。こちらは自分が確かめて入れた数字なので問題ない。

検査は正しいかどうかを判断しない。原文になかったという事実を挙げるだけだ。挙がった数字を1つずつ確認する、という使い方になる。数字の照合そのものの方法はAIが書いた文書を照合する記事に詳しく書いた。

確約の言葉を探す

3本目は言い回しだ。約束をしてしまっている箇所を拾う。

=IF(SUMPRODUCT(--ISNUMBER(SEARCH({"必ず","保証","確実に","絶対"},D2)))>0,"確約の語","")

条件なしの返信案では「必ず間に合わせます」という行が引っかかった。納品日そのものが根拠のない数字なのに、それを必ずと言い切っている。

こういう文は、丁寧で好印象に見える。だからこそ消しにくい。検査で機械的に出しておくと、判断を先送りせずに済む。

質問を3つの箱に振り分ける

下書きを頼む前に、質問を3つに分ける。この作業だけは自分でやる。

1つ目は、手元の資料を見れば答えられるもの。見積書に書いてある単価、規程に書いてある支払条件がこれにあたる。資料の名前とページを依頼文に添えれば、根拠のある返信になる。

2つ目は、誰かに聞かないと分からないもの。在庫の状況、他部署の判断、上長の承認が要るもの。ここは空欄で返させて、いつまでに連絡するかだけ書く。

3つ目は、そもそも答えないと決めるもの。値引きの可否や、他社との比較を求められた場合がこれに入る。

上の例でいえば、支払条件は1つ目、100個以上の単価は2つ目、納品の日数は資料があるかどうかで分かれる。

振り分けを飛ばすと、2つ目の質問に対してそれらしい答えが作られる。作り話が入る場所は、ほぼここだ。振り分けておけば、空欄のまま返ってくる。

確認が要ると返すのも、返信になる

3点のうち1点だけ確認が必要なとき、全部そろうまで待ってしまうことがある。待っている間、相手には何も届かない。

答えられる2点を先に返し、残り1点はいつまでに連絡するかを書く。上の型に沿った返信案では、1点目を確認中にして、9月25日までに連絡すると書いている。

この形にすると、相手は2点について動き出せる。こちらも、期日を書いた時点で自分の宿題が明確になる。

期日は必ず入れる。改めてご連絡します、だけで終わると、相手からの催促で思い出すことになる。書いた期日は、そのまま自分の予定表に入れる。

依頼文に書く5行

抜けと作り話は、頼み方で減らせる。

次の問い合わせメールへの返信の下書きを作ってください。

・問い合わせの中の質問を番号を振って全部列挙し、1つずつ順に答える
・答えられないものは「社内で確認のうえ改めて連絡します」と書き、
  いつまでに連絡するかを空欄にする
・原文にない数字、金額、日付を書かない。必要なら空欄にする
・必ず、保証、確実にという言い回しを使わない
・末尾に、こちらで埋める必要がある空欄の一覧を付ける

2行目が効く。答えられないものを無理に埋めさせないことで、作り話が入る場所が消える。空欄で返ってくれば、そこを自分で埋める。

5行目も外せない。どこを確認すればいいかが最初から一覧になっているので、検査の前に目を通せる。

2つの返信案を比べた結果

同じ問い合わせに対して、条件なしで頼んだ案と型に沿って頼んだ案を検査した。

条件なしの案は99字だった。支払の論点に触れておらず、原文にない数字が3つ、確約の語が1つ。

型に沿った案は172字で、3つの論点すべてに触れていた。確約の語はなし。原文にない数字は3つ出たが、どれも自分が確かめて入れた数字だ。

短いほうが読みやすく見える。実際には、短いのは答えていない論点があるからだった。文字数で良し悪しを判断すると逆になる。

検査を通したあとに見るところ

機械で出せないものが残る。3つある。

1つ目は、相手との関係に合った言い回しかどうか。初めての取引先と長い付き合いの相手では、同じ文面でも受け取られ方が違う。

2つ目は、こちらの事情が反映されているか。今月は立て込んでいる、この案件は社内で調整中だ、といった前提は原文にもAIの側にもない。

3つ目は、そもそも返信していい内容か。金額や条件の話は、自分の権限で答えていいかを先に決める。任せていい範囲の切り分けはAIに任せる判断の記事に書いた。

踏んだ失敗

そのまま送ったことがある。3点聞かれていて2点しか答えていなかった。相手から同じ質問をもう一度聞かれて気づいた。文章としては完成していたので、読み返しても分からなかった。

原文にない日付を送ってしまったこともある。納品の目安として出てきた日付をそのまま残した。倉庫に確認していない日だった。先方の工程に組み込まれていて、あとで謝ることになった。

問い合わせの原文を貼らずに、要約して渡したこともある。自分が要約した時点で1点落ちていたので、返信でも落ちた。原文をそのまま貼る。

送ったあとの記録を残していなかったこともある。何をどう答えたかが手元に残らず、次の問い合わせで食い違った。記録の残し方は電話とメールの記録の記事に分けて書いた。

確認していないこと

上の2つの返信案は、検査の動きを見せるために自分で書いたものだ。実際にどの道具に頼むと何が起きるかは、道具と頼み方で変わる。自分の環境で同じ検査をかけて確かめてほしい。

論点の語をどう決めるかは、問い合わせごとに変わる。上の例では単価、納品、支払の3語を手で入れた。ここを自動で拾う方法は確認していない。

社外に出す文面をどこまで外部の道具に渡してよいかも、ここでは扱っていない。取引先の名前や金額が入るので、社内の規程を先に見る。

メールの誤送信を防ぐ仕組みも扱っていない。宛先の確認は別の話になる。

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