最低賃金が上がったときに事務がやること。月給の人は手当を外して時間額に直す

2026-09-20仕事の型

最低賃金が上がったとき、時給で働く人の単価を直して終わりにすると漏れる。月給で働く人も、時間額に直して最低賃金と比べなければならない。

しかも、その計算では通勤手当と家族手当と精皆勤手当を外す。手元の例では、外すかどうかで時間額が1,163円と1,010円に分かれた。差は153円だ。含めたまま計算すると、下回っている人を見逃す。

以下の除外される賃金と換算の方法は、2026年9月20日に厚生労働省のページと最低賃金法施行規則の条文で確かめた。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で行った。

計算から外す賃金は6つ

厚生労働省のページには、最低賃金の対象となる賃金から除くものが並んでいる。

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  2. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  4. 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  5. 午後10時から午前5時までの労働に対して支払われる賃金のうち、通常の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  6. 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

引っかかるのは6番目だ。毎月きちんと払っている手当なので、給与明細の上では他の手当と区別がつかない。それでも最低賃金の比較からは外す。

逆に、役職手当や資格手当は外すものの一覧に入っていない。名前で決まるのではなく、この6つに当たるかどうかで決まる。手当の名前が独特な職場では、支給の根拠を見て判断する。

月給は月平均所定労働時間で割る

換算の方法は最低賃金法施行規則の第2条に書かれている。条文はこうなっている。

月によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数、月によって所定労働時間数が異なる場合には1年間における1月平均所定労働時間数で除した金額。

日給なら1日の所定労働時間数で割る。日によって時間が違うなら1週間における1日平均で割る。出来高払いなら、その期間の賃金総額をその期間の総労働時間数で割る。

月平均所定労働時間は、年間の所定労働日数と1日の所定労働時間から出す。年間休日が120日なら、365から引いて245日。これに8時間を掛けて12で割ると163.33時間になる。

年間所定労働日数: =365-年間休日日数
月平均所定労働時間: =ROUND(年間所定労働日数*1日の所定労働時間/12,2)

年間休日が125日の職場なら240日で160時間、110日なら255日で170時間だ。この数字が変わると時間額も変わるので、就業規則の年間休日カレンダーから正しい日数を持ってくる。

通勤手当を含めると1,163円、外すと1,010円

月給19万円の人で計算した。内訳は通勤手当1万円、家族手当1万円、精皆勤手当5千円。

月給をそのまま163.33時間で割ると1,163.3円になる。最低賃金が1,050円なら余裕があるように見える。

3つの手当を外すと対象の賃金は16万5千円で、時間額は1,010.2円。1,050円を下回る。同じ人の同じ給与で、計算のしかただけで結論が逆になった。

手当の額が大きい人ほど、この差が開く。通勤の遠い人、扶養家族の多い人。つまり、見落とすと影響が出るのは特定の人に偏る。

5人分の判定表

一覧にすると、誰をいくら上げるかがそのまま出る。列は氏名、月給、通勤手当、家族手当、精皆勤手当、対象の賃金、時間額、判定、必要な引き上げ額。

対象の賃金: =B8-C8-D8-E8
時間額:    =ROUND(F8/$B$4,1)
判定:      =IF(G8<$B$5,"下回る","満たす")
引き上げ額: =IF(G8<$B$5,ROUNDUP($B$5*$B$4-F8,0),0)

B4に月平均所定労働時間、B5に自分の県の最低賃金を入れておく。5人で計算させた結果がこれだ。

氏名 月給 対象の賃金 時間額 判定 引き上げ額
山田 190,000 165,000 1,010.2 下回る 6,497
佐藤 175,000 175,000 1,071.5 満たす 0
鈴木 172,000 157,000 961.2 下回る 14,497
高橋 200,000 165,000 1,010.2 下回る 6,497
田中 168,000 168,000 1,028.6 下回る 3,497

5人のうち4人が下回った。月給がいちばん高い高橋さんも下回っている。手当が3万5千円あるからだ。月給の額面順に並べても、下回る人の順番にはならない。

引き上げ額の合計は月30,988円、年に直すと371,856円。この数字を先に出しておくと、予算の話ができる。

固定残業代がある人は、その分も外す

除外の3番目に「所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金」とある。固定残業代はこれに当たるので、時間額の計算から外す。

月給20万円のうち3万円が20時間分の固定残業代という人で計算した。含めたまま割ると1,224.5円。外すと1,040.8円になる。差は183.7円で、手当を外すときより大きく動いた。最低賃金が1,050円なら、月1,497円足りない。

固定残業代のある職場では、この確認を先にやる。名目が「営業手当」でも、残業代として払っているなら外す。就業規則や賃金規程に何時間分と書いてあれば、それが根拠になる。

ついでに、固定残業代の単価そのものも確かめられる。3万円が20時間分なら1時間1,500円。割増率1.25で逆算すると基礎の時給は1,200円になる。この1,200円が最低賃金を下回っていないかも見る。2つの計算は別物なので、両方が要る。

時給の人の直し方

時給の人は単純に単価を比べるだけだが、直す場所は2つある。給与計算のソフトの単価と、雇用契約書か労働条件通知書だ。ソフトだけ直して契約書をそのままにすると、書面と実際が食い違う。

単価を上げると、時間外の割増も上がる。1,000円が1,050円になれば、割増1.25の残業単価は1,250円から1,312.5円になる。端数の扱いは規程に従う。

締め日をまたぐ月は、発効日の前後で単価が変わる。勤怠の表を日付で分けて集計する。月次の締めの記事で使った第N営業日の考え方と同じで、日付を式で持たせておくと毎年の作業が楽になる。

発効日は都道府県ごとに違う

最低賃金は都道府県ごとに決まり、発効日もそろっていない。同じ10月でも日がずれる。事業所が複数の県にある職場では、県ごとに日付を管理する。

適用されるのは、働いている事業所がある都道府県の最低賃金だ。本社の所在地ではない。支店や店舗が県をまたぐなら、それぞれの県の額を見る。

発効日の前日までに、給与計算のソフトの単価を直す。月の途中で発効する場合は、その月の給与をどう計算するかを先に決めておく。日割りにするか、月の初日から新しい単価にするか。就業規則や賃金規程に定めがあればそれに従う。

踏んだ失敗

時給の人だけ直して終わりにしたことがある。月給の人は関係ないと思い込んでいた。翌年の調査で指摘されて、さかのぼって払った。

手当を含めたまま計算したこともある。上の例と同じで、含めると全員が満たしているように見えた。厚生労働省のページを読み直して気づいた。

月平均所定労働時間を、前の年の数字のまま使っていた年もある。年間休日が1日増えると所定労働日数が1日減り、月平均所定労働時間が0.67時間短くなる。時間額は上がる方向なので判定は甘くならないが、引き上げ額の計算がずれる。

週20時間で働く人については、社会保険の加入の話も同時に動く。こちらの要件は2026年10月に賃金要件が外れる記事に書いた。最低賃金が上がると、同じ労働時間でも月の賃金が増えるので、両方を一度に見ておく。

確認していないこと

2026年度の最低賃金の額と発効日は、厚生労働省の一覧のページでは令和7年度のものしか確認できなかった。報道されている数字はあるが、官公庁のページで確かめられていないのでここには書かない。自分の県の額は、厚生労働省のページか所轄の労働局で確認してほしい。

上の表で使った1,050円は、計算のしかたを示すために置いた仮の数字だ。

月の途中で発効する場合の給与計算のしかたは、職場の規程と労働局の指導で変わる。ここでは書いていない。勤務時間の集計そのものは勤怠管理のテンプレートの形で足りるが、単価の切り替え方は自分の職場の規程を見る。

出典(2026年9月20日確認): 厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」、最低賃金制度の特設ページ、最低賃金法施行規則第2条(埼玉労働局が公開している条文の抜粋)。

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