硬貨で払えるのは、同じ種類の硬貨なら20枚までだ。21枚目からは、受け取る側が断ってよい。1円玉なら20円、10円玉なら200円が、断られずに払える上限になる。
この数字を調べていて、もう1つ引っかかった。ゆうちょ銀行のATMは、入れる額が硬貨の料金以下だと受け付けない。1円玉だけを入れると、1枚でも100枚でも料金のほうが高く、入金できる枚数が1つもない。
条文はe-Gov法令検索の通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第7条と日本銀行法第46条、読み方は財務省のお金には使用できる枚数の制限があるのですかで確かめた。料金はゆうちょ銀行のATMご利用時間・料金と手数料・料金一覧(2026年10月1日現在の版)、その他の料金、三菱UFJ銀行のその他手数料を見た。どれも2026年10月6日に確認している。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で確認、2026年10月6日。表の100枚×6種類の結果は、Pythonで同じ規則を組んで出し直し、600マス全部が一致した。
小銭で払うと何枚から断られるのか。同じ硬貨の21枚目から
通貨法の第7条は1文しかない。「貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する」。額面の20倍までなので、枚数にすると20枚になる。財務省のFAQも「20枚までは貨幣による支払いを行っても良い」と言い換えている。
紙幣には上限がない。日本銀行法第46条第2項が、日本銀行券は「法貨として無制限に通用する」と書いている。1万円の支払いに千円札10枚を出されても、断る根拠はない。硬貨だけに枚数の線が引かれている。
財務省のFAQは理由も書いている。硬貨は少額の取引に向くが、数が多いと保管や計算に手間がかかり、社会通念上不便になる。そのうえで、取引の相手が了解すれば21枚以上を使うのを妨げない、とも書いている。20枚を超えた支払いが違法になるわけではない。断ってもよい、というだけだ。
配布した表の1枚目に、硬貨の枚数を種類ごとに入れると、20枚を超えた分が赤くなる。例として、1,658円を100円玉12枚、50円玉3枚、10円玉25枚、5円玉4枚、1円玉38枚で払う場合を入れた。合計82枚。赤くなったのは10円玉と1円玉の2行で、超えた枚数は10円玉が5枚、1円玉が18枚だった。受け取りを断られうる分は68円になる。残りの1,590円は、82枚のうちの59枚で払っていて、これは断れない。
6種類の硬貨を20枚ずつ使うと、上限は13,320円になる。500円玉20枚で10,000円、100円玉で2,000円、50円玉で1,000円、10円玉で200円、5円玉で100円、1円玉で20円。合わせて120枚だ。ただし、これは「種類ごとに20枚」と読んだ場合の数字で、財務省のFAQはそこまで書いていない。理由は最後の節に書いた。
「20枚まで」を取り違えた対応は2つの方向にある
1つ目は、店や窓口の側が「硬貨は20枚まで」と言って、20枚以内の硬貨まで断ってしまう形だ。100円玉15枚と10円玉15枚で1,650円を払われたとき、どの種類も20枚以内なので、種類ごとに読むなら断る根拠はない。合計30枚だから断る、という扱いは条文の読み方として私は取らない。
2つ目は逆で、払う側が「法律で20枚まで使える」と考えて、種類を混ぜれば何枚でもよいと思ってしまう形。1円玉38枚は、何と混ぜても18枚が21枚目以降になる。社員が立て替えた経費を、小口現金から硬貨で大量に渡す場面でも同じことが起きる。受け取る社員が了解すれば問題はないが、了解を取らずに1円玉50枚を封筒に入れて渡すのは、断られうる渡し方だ。
経費精算の金額そのものを確かめる手順は経費精算のチェックを式でやる記事に書いた。硬貨の枚数は、その次に気にすればよい。
小口現金の1円玉をゆうちょのATMに入れると、料金のほうが高い
小口現金を回していると、1円玉と5円玉がたまる。月末に通帳と一緒にATMへ持っていけば済みそうに見えるが、ゆうちょ銀行のATMで硬貨を入れると、枚数で料金がかかる。
| 硬貨の枚数(1回) | ATM硬貨預払料金 |
|---|---|
| 1〜25枚 | 110円 |
| 26〜50枚 | 220円 |
| 51〜100枚 | 330円 |
料金は入れた額とは別に、通常貯金の残高から引かれる。そして、入れる額が料金以下のときは取り扱わない。1回に入れられる硬貨は100枚までで、硬貨を扱うのは平日の7時から18時だけだ。
1円玉50枚、50円を入れようとすると、料金は220円で、50円はそれ以下なので受け付けない。100枚にしても100円で、料金の330円に届かない。1円玉だけでは、1枚から100枚までのどの枚数でも入金できない。
5円玉はもっとややこしい。23枚から25枚なら入る。115円から125円で、料金の110円を上回るからだ。ところが26枚にすると料金が220円に上がり、130円では足りなくなって受け付けない。次に入るのは45枚からで、51枚でまた料金が330円になって止まり、67枚まで入らない。1枚から100枚までのうち、5円玉が受け付けられないのは57通りあった。
仕組みは単純で、入れる額は1枚ごとに同じ幅で増えるのに、料金は25枚と50枚のところで段になって跳ねる。額の小さい硬貨ほど、段を越えた直後に料金のほうが上に出る。10円玉は12枚から入り、1度入れば100枚まで止まらない。50円玉は3枚から、100円玉は2枚から入る。500円玉は1枚から入る。
入っても、口座に残る割合は小さい。10円玉100枚、1,000円を入れると330円が引かれて670円しか増えない。5円玉100枚なら500円のうち170円だ。5円玉は1枚から100枚までのどの入れ方でも、残るのは入れた額の34%が最大だった。

ATMで1円玉を入れる方法が1つだけある。紙幣と一緒に入れることだ。1円玉20枚と千円札1枚なら、硬貨は20枚で料金は110円、入れる額は1,020円なので受け付ける。口座に増えるのは910円になる。ただ、20円を入れるために110円を払っている。
何回かに分けても安くならない。窓口なら100枚まで無料
ATMの料金は、何回かに分けて入れても枚数を足さず、回ごとにかかる。100枚を1回で入れると330円、25枚ずつ4回に分けると440円になる。分けるほど高い。
窓口は違う。ゆうちょ銀行の窓口の硬貨取扱料金は、1枚から100枚までが無料だ。2024年3月31日までは無料が50枚までで、2024年4月1日に100枚まで広がった。101枚から500枚で550円、501枚から1,000枚で1,100円、そこから500枚ごとに550円ずつ増える。三菱UFJ銀行の窓口の大量硬貨取扱手数料も、100枚まで無料、101枚から500枚で550円、501枚から1,000枚で1,100円、1,001枚以上で1,650円と、同じ刻みだった。三菱UFJ銀行のこの手数料は、ATMでの取引を対象にしていない。
窓口で気をつける点が2つある。ゆうちょ銀行は、同時に複数の手続きを頼むと枚数を合算して料金を決める。通帳を2冊出して60枚ずつ入れても、120枚として550円かかる。もう1つは、硬貨を数えたあとで手続きをやめても料金がかかることだ。1円玉を何枚持ってきたか分からないまま窓口に出し、数えたら101枚あった、では550円がかかる。持っていく前に数えておけば、料金は先に分かる。
釣り銭を両替で用意すると、10枚と11枚で770円違う
小口現金の釣り銭を銀行の窓口で両替して用意する会社もある。三菱UFJ銀行の窓口の両替手数料は、枚数で決まる。
| 枚数 | 口座あり | 口座なし |
|---|---|---|
| 1〜10枚 | 無料 | 550円 |
| 11〜500枚 | 770円 | 770円 |
| 501〜1,000枚 | 1,540円 | 1,540円 |
口座ありで無料になるのは1人1日1回、10枚までで、窓口でキャッシュカードか通帳を見せる。枚数は、持っていく枚数と持ち帰る枚数の多いほうで数える。千円札1枚を100円玉10枚にするなら10枚で無料、50円玉を1枚混ぜて100円玉9枚と50円玉2枚の11枚にすると770円になる。
表の4枚目に、1万円札1枚を釣り銭に替える例を入れた。500円玉4枚、100円玉50枚、50円玉40枚、10円玉80枚、5円玉20枚、1円玉100枚で、ちょうど1万円の294枚。手数料は770円で、1万円の7.7%にあたる。持ち帰る硬貨が501枚を超える組み方にすると、1,540円に倍増する。
逆向きでも同じ数え方になる。たまった10円玉200枚を千円札2枚に替えると、持っていく枚数の200枚で数えて770円かかる。2,000円のうち770円だ。同じ200枚を窓口で口座に入れるなら、大量硬貨取扱手数料は550円で済む。両替するか入金するかで、220円の差が出た。
月末の締めの中に硬貨の入金や両替を入れるなら、窓口の開いている平日に置くことになる。ATMで硬貨を扱うのも平日だけだ。締めの日程の組み方は月次の締めを第何営業日で組む記事に書いた。
配布した表の使い方
1枚目の「1_支払い」は、硬貨の枚数を種類ごとに入れると、20枚を超えた枚数と、断られうる金額を出す。下には6種類を20枚ずつ使ったときの13,320円を、式で出してある。
2枚目の「2_ATM入金」は、ゆうちょ銀行のATMに入れる硬貨の枚数と紙幣の額を入れると、料金、入れられるか、口座に増える額、あと何枚で料金が上がるかを出す。同じ枚数を窓口に持っていったときの料金も横に並べた。
3枚目の「3_ATM早見」は、1種類の硬貨だけを1枚から100枚まで入れたときの表で、入力は要らない。受け付けない枚数は「不可」と赤く出る。下の行に、不可の数、入れられる最少の枚数、100枚で増える額、残る割合の最大を出した。図の数字はこの行から取っている。
4枚目の「4_両替」は、三菱UFJ銀行の窓口で両替したときの手数料を出す。持ち帰りたい硬貨の枚数と、持っていく紙幣の枚数を入れる。
式は「料金の段」をIFで並べただけで、ATMの料金は =IF(n<=25,110,IF(n<=50,220,330))、窓口は =IF(n<=100,0,550*CEILING(n/500,1)) の形だ。銀行が料金を変えたら、この数字を直す。
1円単位の端数がどこで生まれるかは、請求書の消費税の端数処理で決まる部分も大きい。インボイスの消費税の端数処理の記事で、税率ごとに1回の丸め方を書いた。
確かめていないこと
20枚を種類ごとに数えるのか、全部の硬貨を足して数えるのかは、条文にも財務省のFAQにも書いていない。財務省のFAQは「20枚までは貨幣による支払いを行っても良い」とだけ書いている。表は種類ごとに20枚で組んだ。額面の20倍という書き方からそう読んだが、裁判例や財務省の別の資料で確かめたわけではない。慎重に扱うなら、全部の硬貨を足して20枚以内に収める。
セルフレジや自動販売機で硬貨を何枚まで入れられるかは、機械と店の決まりで、通貨法の20枚とは別の話になる。ここは調べていない。
三井住友銀行やみずほ銀行の両替と硬貨入金の手数料は、公式のページから取れず、確認していない。ゆうちょ銀行のATMは、種類や置き場所によって硬貨を扱わないものがあると書かれている。郵便局やゆうちょ銀行の店舗の中のATMは硬貨を扱う。駅やコンビニのATMで1枚ずつ試してはいない。



