大晦日の22時から元日の朝5時まで働いても、元日が国民の祝日だというだけでは、法律上の割増は深夜の25%しか付かない。労働基準法は祝日を休日にせよとは決めていないからだ。35%の休日割増が付くのは、就業規則で元日を法定休日にしている会社だけで、その場合も割増が上がるのは0時からになる。
時給1,500円、休憩1時間で実働6時間なら、元日が法定休日でない会社は11,250円、法定休日の会社は13,350円。差は2,100円で、元日の夜勤(元日22時から翌朝5時)の12,300円より、大晦日の夜勤のほうが1,050円高くなる。
条文はe-Gov法令検索の労働基準法第34条・第35条・第37条、労働基準法施行規則第19条・第20条、割増賃金の率を定める政令で読んだ。休日を暦日で数えることは厚生労働省のモデル就業規則の第4章と長崎労働局の労働法の基礎講座 第28回、重なったときの率は厚生労働省の法定労働時間と割増賃金のFAQで確かめた。どれも2026年10月6日に確認した。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で確認、2026年10月6日。勤務と時給は架空の例だ。
元日に働いたら休日手当は出るのか。祝日には法律の割増がない
労働基準法第35条が求めているのは、毎週少なくとも1回、または4週間で4日以上の休日だけだ。どの曜日を休みにするか、国民の祝日を休みにするかは書いていない。厚生労働省のモデル就業規則の解説にも、労基法は何曜日を休日とするか、祝日を休日とするかを決めていない、と書いてある。
35%の割増が付く「休日」は、この週1日(または4週4日)の休日で、実務では法定休日と呼ぶ。根拠は、労働基準法第37条と、率を定めた政令の「休日の労働については三割五分」の一文だ。政令のいう休日が第35条の休日だということは、平成6年1月4日の通達(基発第1号)に書いてある。
だから、元日に働いた人の賃金は3つに分かれる。
- 就業規則で法定休日を「日曜日」と決めている会社。2027年の元日は金曜日なので、法律上はただの平日の労働になる。割増が付くのは、22時から5時の深夜の分と、1日8時間を超えた分だけだ。
- 就業規則で年末年始を休日にしているが、法定休日は日曜日のままの会社。元日は会社の休日(所定休日)だが、法定休日ではない。その日に働いても35%の義務はない。週40時間を超えれば、超えた分に25%が付く。
- 4週4日の休日で回しているシフトの職場で、その4週の法定休日に元日が当たっている人。この人だけが、元日の0時から24時に働いた時間に35%が付く。
取り違えやすいのは2の会社だ。元日は会社の休日なので35%を付けたくなるが、法律の義務はない。年末年始手当や祝日手当は、会社が規程で決めて払うもので、労働基準法の割増とは別だ。
法定休日は0時から24時で切る。大晦日の夜勤は0時で率が変わる
元日が法定休日の会社では、大晦日22時からの夜勤は0時を境に率が変わる。休日は、原則として暦日、つまり午前0時から午後12時までの24時間で与えるものだからだ。モデル就業規則の解説も、長崎労働局の資料も、同じことを書いている。
長崎労働局の資料には、前日の勤務が0時を越えたら「休日を与えたことになりません」とある。大晦日の夜勤で元日の5時まで働いた人は、元日を休んだことにならない。
賃金の側も同じで、法定休日の割増は、その日の0時から24時に働いた時間にだけ付く。時給1,500円、22時から翌朝5時、休憩は2時から3時の1時間で数えると、こうなる。
| 時間帯 | 時間 | 元日が法定休日でない | 元日が法定休日 |
|---|---|---|---|
| 12月31日22時から24時 | 2時間 | 3,750円(1.25倍) | 3,750円(1.25倍) |
| 1月1日0時から2時、3時から5時 | 4時間 | 7,500円(1.25倍) | 9,600円(1.60倍) |
| 合計 | 6時間 | 11,250円 | 13,350円 |
1.60倍は、休日の35%と深夜の25%を足したものだ。施行規則第20条第2項に、休日の労働が22時から5時に及んだら6割以上と書いてある。
逆向きもある。元日22時から1月2日5時の夜勤では、法定休日の割増は0時で終わる。元日の2時間が1.60倍、2日の4時間は1.25倍で12,300円。0時より後ろが長い大晦日の夜勤のほうが、法定休日にかかる時間が長い。
日勤から日付をまたいで残業したら、0時から先は時間外ではなく休日労働になる
大晦日に9時から日勤に入り、そのまま元日の2時まで残った場合を数えた。休憩は12時から13時の1時間、実働16時間だ。
日付をまたぐ1日の数え方は、昭和63年1月1日の通達(基発第1号)にある。2暦日にわたる継続勤務は1勤務として、始業時刻の属する日の労働とする。だから8時間は大晦日の9時から数え、18時で達する。
元日が法定休日でない会社では、18時からが時間外になる。18時から22時の4時間が1.25倍、22時から元日2時の4時間が時間外と深夜の重なりで1.50倍だ。
元日が法定休日の会社では、0時から2時の2時間が休日労働に変わる。休日労働には法定労働時間がないので、時間外の割増は重ならない。厚生労働省のFAQにも、休日労働の割増と時間外労働の割増は重複しない、とある。1.50倍だったものが1.60倍になる。
| 区分 | 元日が法定休日でない | 元日が法定休日 |
|---|---|---|
| 9時から18時(法定内8時間) | 12,000円 | 12,000円 |
| 18時から22時(時間外4時間) | 7,500円 | 7,500円 |
| 22時から24時(時間外の深夜2時間) | 4,500円 | 4,500円 |
| 0時から2時(2時間) | 4,500円(時間外の深夜) | 4,800円(休日の深夜) |
| 合計 | 28,500円 | 28,800円 |
差は300円しかない。時間外の深夜がもともと50%で、休日の深夜の60%との差が10%だからだ。夜勤では0時から先が25%なので、休日に変わると35%上がる。法定休日の扱いで賃金が大きく動くのは、夜から入る勤務のほうだ。
22時から5時を7時間と出す式や25時入力の扱いは、日をまたぐ勤務時間の計算の記事に書いた。月の集計で法定休日を別枠にする方法は、勤怠表で残業時間を出す記事にある。
夜勤の割増を取り違えた5つの例と、1回あたりの差
配布している表の「2_取り違え」シートに、よくある取り違えで出した額と正しい額を並べた。どれも時給1,500円、同じ勤務だ。
| 取り違え | 取り違えた額 | 正しい額 | 差 |
|---|---|---|---|
| 元日が法定休日なのに、勤務全体を大晦日の勤務として25%だけ払った | 11,250円 | 13,350円 | 2,100円不足 |
| 元日の夜勤を、翌朝5時まで全部60%で払った | 14,400円 | 12,300円 | 2,100円多い |
| 法定休日は日曜なのに、元日は祝日だから0時から60%で払った | 13,350円 | 11,250円 | 2,100円多い |
| 法定休日は日曜なのに、元日の日勤8時間を35%で払った | 16,200円 | 12,000円 | 4,200円多い |
| 休憩を取ったのに引かずに7時間で払った | 13,125円 | 11,250円 | 1,875円多い |
払い足りないのは1つ目だけで、労働基準法第37条に届かない。通達の「始業日の労働とする」を、法定休日の判定にまで当てはめると起きる。通達が決めているのは1日8時間の数え方で、休日の判定は暦日で別にする。夜勤者が10人いれば、大晦日の一晩で21,000円の不足になる。
2つ目から5つ目は払いすぎだ。違反ではないが、規程に書いていない払い方を続けると、翌年に戻したときに説明がつかない。私が一番取り違えやすいと思うのは2つ目で、翌日が法定休日でなければ0時からは25%だけになる。
5つ目には別の問題もある。7時間を休憩なしで働かせると、労働基準法第34条の「6時間を超える場合は少なくとも45分」に足りない。表ではこの行の確認欄が赤くなる。
計算の取り違えもある。終業の5時から始業の22時をそのまま引くと、Excelではマイナス17時間になり、時刻の表示形式だとセルが####で埋まる。1日足してから引くか、MODで24時間の余りを取ると7時間になる。
0時をまたぐ勤務を6つに分けるExcelの式
配布している表は、1行に1つの勤務を入れると、実働を法定内、法定内の深夜、時間外、時間外の深夜、法定休日、法定休日の深夜の6つに分けて賃金を出す。率は1.00、1.25、1.25、1.50、1.35、1.60で、7行目で書き換えられる。
仕組みは、時刻を日付つきの通し番号にして、区間どうしの重なりを数えるだけだ。始業日がB9、始業の時刻がC9、終業の時刻がD9なら、終業の日時はこう出す。
=B9+D9+IF(D9<=C9,1,0)
終業が始業以前の時刻なら翌日として1を足す。休憩の時刻も同じように、始業より前の時刻なら翌日として扱う。
そのうえで、ある区間(aからb)に働いた長さは、勤務と区間の重なりから、休憩と区間の重なりを引いて出す。
=MAX(0,MIN(終業,b)-MAX(始業,a))-MAX(0,MIN(休憩の終わり,b)-MAX(休憩の始め,a))
aとbを変えると6つの区分が出る。深夜は、前日・当日・翌日の22時から翌5時の3つの帯を足す。勤務は24時間未満と決めたので3つで足りる。法定休日の区分は、始業日が法定休日なら0時まで、翌日が法定休日なら0時からを数える。
迷ったのは8時間の数え方だ。始業日の勤務として数えるが、法定休日の暦日に入った時間は外す。そこで法定休日でない部分の始めを出し、そこから休憩を除いて8時間に達する時刻を求めた。その後ろが時間外だ。
=IF(休憩の始め>=始め+8/24,始め+8/24,始め+8/24+(休憩の終わり-休憩の始め))
休憩が法定休日の側にあるときは、休憩の時刻を始めに寄せてから使う。そうしないと休憩を二重に引く。
式は、1分ずつ数える別のプログラムと突き合わせた。12月30日から1月1日に始まる勤務を乱数で20件作り、20件とも6つの区分の時間と賃金が1円まで一致した。

年末年始のシフトを表に入れて、法定休日の分を確かめる手順
- 「1_割増の計算」のB3に1時間あたりの賃金を入れる。月給の人は、割増の基礎に入る月給を1か月平均の所定労働時間で割る。施行規則第19条の月給の場合の出し方だ。
- 9行目から下に、勤務を1行ずつ入れる。始業日、始業、終業、休憩の始めと終わり。休憩がない勤務は休憩の欄を空けておく。
- G列とH列に、始業日とその翌日が法定休日かを「はい」「いいえ」で入れる。ここは就業規則を見て決める。祝日かどうかで決めない。
- P列に賃金、Q列にそのうちの割増の分が出る。緑の欄は法定休日の割増が付いた時間、赤い確認欄は休憩が足りない行か、区分の合計が実働とずれた行だ。
法定休日を決めていない会社では、長崎労働局の資料によると、日曜と土曜の両方働いた週は後ろの土曜が法定休日労働になる。週の起算日は定めがなければ日曜で、2027年の元日を含む週は12月27日から1月2日だ。
役所や銀行の年末年始の休みは、年末年始の最終営業日と仕事始めの記事で数えた。シフトを組む前に、その週の法定休日がどこに来るかを見ておくと、0時をまたぐ勤務で迷わない。
確かめていないこと
法定休日の割増を0時で切ることは、休日は暦日で与えるという原則から出る扱いで、社会保険労務士や弁護士のページでは平成6年5月31日の通達(基発第331号)として引かれている。この通達の原文は、厚生労働省の法令等データベースでは見つけられなかった。暦日の原則はモデル就業規則と長崎労働局の資料で確かめた。
法定休日の勤務が0時を越えて翌日の平日に入った場合、その0時から後ろの時間を、どの日の8時間として数えるかは確かめていない。表では、法定休日でない部分を始めから数えて8時間を超えた分を時間外にしている。翌日の本来の勤務と続けて働くような勤務では、扱いが変わるかもしれない。
8時間3交替のような番方編成の交替制で要件を満たす職場は、休日を継続24時間で与えてよい(昭和63年3月14日基発第150号、モデル就業規則の解説による)。この場合に割増をどこで切るかは確認していない。
週40時間を超えた分、1か月60時間を超えた分の50%、変形労働時間制、所定が8時間より短い職場の法定内残業は、表で扱っていない。



