労働者名簿に書くのは9項目、賃金台帳に書くのは8項目で、どちらも条文に並んでいる。保存期間は労働基準法第109条で5年だが、附則第143条第1項により当分の間3年になっている。
起算日は書類の種類ごとに違う。名簿は退職の日、賃金台帳は最後の記入をした日から数える。ここを取り違えると、捨てていい時期が月単位でずれる。
以下の条文は、e-Gov法令検索で2026年9月22日に確かめた。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で行っている。使った120件は、期限の出方を確かめるために作った架空のものだ。
労働者名簿に書くのは9項目
法第107条第1項に、氏名、生年月日、履歴の3つが挙がっている。残りは厚生労働省令で定めるとあり、施行規則第53条第1項に6つ並ぶ。
性別、住所、従事する業務の種類、雇入の年月日、退職の年月日及びその事由、死亡の年月日及びその原因の6つだ。合わせて9項目になる。
退職の事由については、解雇の場合はその理由を含む、と書いてある。自己都合か会社都合かだけでなく、解雇なら理由まで要る。
従事する業務の種類だけは例外がある。施行規則第53条第2項に、常時30人未満の労働者を使用する事業ではこの項目を記入することを要しない、とある。30人が分かれ目だ。
対象は各労働者だが、日日雇い入れられる者は除くとある。日雇いの人は名簿に載せなくてよい。
書いた内容に変更があったときは、法第107条第2項により遅滞なく訂正する。住所が変わったら直す。年に1回まとめて直す運用は条文に合わない。
賃金台帳に書くのは8項目。法第41条に当たる人は2つ省ける
法第108条は、各事業場ごとに賃金台帳を作り、賃金支払の都度遅滞なく記入しろとしている。項目は施行規則第54条第1項に8つ並ぶ。
氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、延長時間数と休日労働時間数と深夜労働時間数、基本給と手当その他賃金の種類毎の額、賃金の一部を控除した場合はその額の8つだ。
省けるものが2つある。日々雇い入れられる者で1か月を超えて引き続き使用されない人は、賃金計算期間を書かなくてよい。第54条第4項だ。
もう1つが第54条第5項で、法第41条各号のいずれかに該当する労働者と、法第41条の2第1項により労働させる労働者については、労働時間数と、延長時間数と休日労働時間数と深夜労働時間数を記入することを要しない、としている。管理監督者がここに入る。
ただし法第41条が適用しないのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定だけだ。深夜の割増賃金は別に要る。台帳に書かなくてよいことと、払わなくてよいことは別なので、深夜の時間をどこに残すかは決めておく。
通貨以外のもので払う賃金があるときは、第54条第3項によりその評価総額を書く。社宅や食事の現物給与がこれにあたる。
置くのは各事業場ごと
法第107条第1項にも第108条にも、各事業場ごとに、と書いてある。会社ごとではない。
支店が3つあれば、名簿も台帳も3つ要る。本社で全社分をまとめて持っているだけだと、条文の形にはならない。労働基準監督署の調査は事業場を単位にして入るので、その場で出せることが要る。
事業場をまたいで異動した人は、異動のたびに新しい事業場の名簿に載る。前の事業場の名簿からは、退職ではなく異動として落ちる。落ちたほうの名簿も、保存期間のあいだは残す。
本社で1つのファイルにまとめて管理するなら、事業場の列を作って分けられるようにしておく。配った名簿のシートは列を足せるので、右端に事業場の列を1つ足して、フィルターで分ける形にできる。
保存は5年だが、当分の間3年になっている
法第109条は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない、としている。
その下に附則第143条第1項があり、第109条の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは「三年間」とする、と書いてある。だから今の運用は3年だ。
当分の間がいつまでかは条文に書いていない。賃金の請求権の時効も同じ附則で3年に短縮されていて、こちらとセットで見直される見込みだが、時期は確認していない。
違反すると法第120条第1号により30万円以下の罰金になる。第106条から第109条までがまとめて挙がっている。
起算日は書類の種類ごとに違う
施行規則第56条第1項に5つ並んでいる。
| 書類 | 起算日 |
|---|---|
| 労働者名簿 | 労働者の死亡、退職又は解雇の日 |
| 賃金台帳 | 最後の記入をした日 |
| 雇入れ又は退職に関する書類 | 労働者の退職又は死亡の日 |
| 災害補償に関する書類 | 災害補償を終わつた日 |
| 賃金その他労働関係に関する重要な書類 | その完結の日 |
退職した人の書類をまとめて退職日から数えたくなるが、賃金台帳だけは違う。最後の記入をした日から数える。
第56条第3項により、この決まりは労働時間の状況に関する記録、労使委員会の議事録、年次有給休暇管理簿にも準用される。有給の管理簿も同じ数え方になる。
賃金の支払期日のほうが遅ければ、そちらから数える
見落としやすいのが第56条第2項だ。賃金台帳と、賃金その他労働関係に関する重要な書類については、その記録に係る賃金の支払期日が最後の記入をした日や完結の日より遅い場合、支払期日を起算日とする、とある。
締めた月の翌月に払う形なら、支払期日のほうが必ず遅い。だから起算日が1か月ほど後ろにずれる。
120件のうち、この条項で起算日が動いたのは48件だった。たとえば最後の記入が2019年11月8日で支払期日が同年12月25日の1件は、3年の満了日が2022年11月8日ではなく2022年12月25日になる。1か月半ほど長く持つことになる。
短くなるほうへは動かない。遅いほうを取るので、いつも同じか後ろになる。
120件で数えると、3年と5年で33件ずれた
期限の出方を確かめるために、5種類の書類を120件作って数えた。2026年9月22日の時点で捨てられるかどうかを出している。
3年で数えると83件、5年で数えると50件が捨てられる。差は33件で、120件の27%にあたる。
経過措置で3年のうちに捨ててよいのか、先に5年へ戻ることを見込んで持っておくのかは、事業場で決めることになる。配った表は両方を並べて出すので、決める材料になる。
保管の場所に余裕があるなら5年で運用しておくほうが後で困らない。退職の手続きで集めた書類も同じ棚に入るので、退職者1人につき何年持つかを決めておくと整理しやすい。
抜けている項目を数える
名簿のシートは、9項目を列にして、右端に抜けている数を出す。0でなければ赤くなる。

見本の8人で数えると、抜けのある人が3人、抜けている項目が3つ出た。業務の種類が空の人、退職日が入っているのに事由が空の人、履歴が空の人だ。
常時使用する労働者の数を29人に変えると、抜けのある人が2人、項目が2つに減る。業務の種類を数えなくなるからだ。人数で要る項目が変わる部分を、入力で切り替えられるようにしてある。
退職日が空の人には、退職の事由と死亡の欄を求めない。まだ在職している人まで赤くなると、見る気が失せる。
入社時に集める書類の話は雇用保険の資格取得届に書いた。名簿の雇入の年月日と、資格取得届に書く日は同じ日になる。
確かめていないこと
当分の間がいつまでかは確認していない。附則第143条第1項に期限は書かれていない。
電子で保存する場合の要件も確認していない。名簿と台帳を紙で持たずに済ませるには別の決まりがあるが、そちらは読んでいない。
保存期間の満了日は、EDATEで3年後と5年後の応当日を出している。日単位の厳密な数え方は民法の期間の定めによる。1日ずれても困らないように、応当日まで持つ形にしてある。



