賞与を払ったら、支給日から5日以内に賞与支払届を出す。保険料の計算は、支給額の千円未満を切り捨てた標準賞与額で行う。
上限が2つあって、そこで金額が頭打ちになる。夏に412万円を払った人の冬の賞与を計算したら、標準賞与額305万円のうち健康保険の対象は161万円までだった。差の144万円には健康保険料がかからない。
以下の要件は、2026年9月21日に日本年金機構の賞与の手続きのページで確かめた。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で行った。金額は式を確かめるために作った架空のものだ。個別の判断は所轄の年金事務所に確認してほしい。
対象は年3回以下の支給
まず何が賞与にあたるかを決める必要がある。年金機構のページには、年3回以下の支給のものが対象と書かれている。名称を問わず労働者が労働の対償として受ける給与、手当、賞与などが該当する。
年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象になる。つまり、賞与ではなく毎月の報酬として扱われ、算定基礎届や月額変更届の側に入る。区分の考え方は算定基礎届の記事に書いた。
決算賞与や期末手当を加えて年4回になると、扱いが変わる。回数を増やす話が出たときは、この境目を先に確認する。
届出は、被保険者および70歳以上被用者へ賞与を支給した場合に、支給日より5日以内と書かれている。5日はすぐ来る。支給日が決まった時点で、提出の日を予定表に入れておく。
標準賞与額は千円未満を切り捨てる
保険料の計算に使うのは、実際に支払われた賞与額から1,000円未満を切り捨てた額だ。税引き前の総支給額から切り捨てる。
=ROUNDDOWN(支給額,-3)
ROUNDDOWNの第2引数に-3を入れると、千円単位で切り捨てられる。4,120,600円なら4,120,000円になる。
切り捨てるのは支給額そのものであって、保険料ではない。手取りや控除後の額から計算しないように、列を分けておく。
同じ月に2回出すと、合算してから切り捨てる
ここが引っかかる。年金機構のページには、同月内に2回以上支給されるときは合算した額で上限額が適用されると書かれている。
手元の例で計算した。6月15日に420,700円、6月30日に1,680,600円を払った人がいる。
合算してから切り捨てると2,101,000円になる。それぞれを切り捨ててから足すと、420,000円と1,680,000円で2,100,000円だ。差は1,000円になる。
金額としては小さいが、届出の数字が違ってしまう。合算する式はこう書ける。
=ROUNDDOWN(SUMIFS($支給額,$氏名,A2,$支給日,">="&DATE(YEAR(B2),MONTH(B2),1),
$支給日,"<"&EDATE(DATE(YEAR(B2),MONTH(B2),1),1)),-3)
DATE(YEAR(B2),MONTH(B2),1)でその月の1日を作り、EDATEで翌月の1日を作る。この範囲で同じ人の支給額を足してから切り捨てる。
すでに届け出た月に追加の支給があった場合も、同一月内の支給をすべて合算して届け出る必要があると書かれている。追加で払ったときは、前の届も含めて出し直す。
上限は健康保険が年度573万円、厚生年金が月150万円
上限の性質が2つで違う。
健康保険は年度の累計額で573万円が上限になる。年度は毎年4月1日から翌年3月31日までだ。
厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限になる。累計ではないので、毎回150万円までかかる。
厚生年金の対象: =MIN(同月の合算,1500000)
健康保険の対象: =MAX(0,MIN(標準賞与額,5730000-前回までの累計))
健康保険のほうは、その年度にそれまで積み上げた累計を引いた残りが枠になる。累計が573万円に達していれば、それ以降の賞与は健康保険の対象が0円になる。
前回までの累計は、年度の開始日からその支給日より前までを足す。
=ROUNDDOWN(SUMIFS($支給額,$氏名,A2,$支給日,">="&DATE(2026,4,1),$支給日,"<"&B2),-3)
夏の賞与が大きいと、冬に枠が残らない
8件で計算した結果を見ると、上限の効き方がはっきり出た。
夏に4,120,600円を受け取った人は、標準賞与額が4,120,000円。健康保険の枠は573万円なので、残りは1,610,000円になる。
この人が冬に3,050,400円を受け取ると、標準賞与額は3,050,000円だ。ところが健康保険の対象になるのは残りの1,610,000円までで、超える1,440,000円には健康保険料がかからない。年度累計は7,170,000円になる。
厚生年金のほうは、夏も冬も毎回1,500,000円で頭打ちになっている。同じ賞与でも、2つの保険で対象額が違う。
給与計算のソフトが対応していれば自動で処理されるが、手元で検算するときはこの違いを知っていないと合わない。健康保険料だけが少ないのは間違いではない。
全体で見ると、対象額は支給額より小さくなる
8件の合計で見ると、効き方が分かりやすい。
支給額の合計は12,939,750円。千円未満を切り捨てた標準賞与額の合計は12,935,000円で、切り捨てで4,750円減っている。
健康保険の対象になった額の合計は11,495,000円だった。標準賞与額との差は1,440,000円で、11.1%にあたる。上限に当たった1人の分だ。
=ROUND((標準賞与額の合計-健保対象の合計)/標準賞与額の合計*100,1)
この割合は、高い賞与を受け取る人の人数で決まる。1人でも573万円を超える人がいると、その超過分がまるごと落ちる。
賞与の原資を決めるときに、会社が負担する保険料の見込みを出すなら、支給額ではなくこの対象額に率を掛ける。支給額で計算すると、負担を多く見積もることになる。
逆に言えば、上限に当たる人がいない職場では、支給額と対象額はほぼ同じになる。自分の職場でどちらなのかは、一度計算してみないと分からない。
累計を人ごとに持つ
年度の累計は、人ごとに持たないと意味がない。全社の合計では上限の判定ができない。
表は1行1件にする。氏名、支給日、支給額の3列を入力して、残りを式にする。支給のたびに行を足していけば、累計はSUMIFSが自動で拾う。
年度の切り替えに注意する。4月1日で累計が0に戻る。式の中にDATE(2026,4,1)と直接書くと、翌年に書き換えを忘れる。年度の開始日をセルに置いて参照する。
退職者の分も同じ表に残す。年度の途中で辞めた人が同じ年度内に再雇用された場合、累計は引き継ぐ。退職時の手続きは退職者が出たときの記事に書いた。
踏んだ失敗
同じ月の2回目を別々に届け出たことがある。合算して切り捨てるという決まりを知らなかった。金額が1,000円違い、訂正の届を出した。
健康保険の上限を月ごとの上限だと思い込んでいたこともある。厚生年金の150万円と混同していた。健康保険は年度の累計で、厚生年金は1か月ごとだ。性質が違うと覚えるまで毎回調べていた。
支給日を給与計算の対象月で入れていた年もある。累計の集計は支給日で切るので、12月支給の賞与を11月の行に入れると年度の境目で狂う。実際に払った日を入れる。
5日以内という期限を忘れていたこともある。年末の賞与は業務が立て込む時期と重なる。支給日が決まった時点で提出日を先に押さえる。期限を先に書き出す考え方は月次の締めの記事と同じだ。
確認していないこと
保険料率は扱っていない。標準賞与額を出すところまでで、そこに掛ける率は健康保険組合や都道府県で変わる。協会けんぽなら都道府県ごとの率表を見る。
賞与を支給しなかった月の届出も確認していない。賞与支払予定月に支給がなかった場合の取り扱いがあるが、今回読んだ範囲では条件を読み切れていない。
70歳以上被用者の届出の様式も扱っていない。同じ届で出す形になるが、記入の欄が別にある。
産前産後休業や育児休業の期間中に賞与を支給した場合の免除も確認していない。該当する人がいる年は、年金事務所に先に聞く。
出典(2026年9月21日確認): 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」。



