源泉徴収した所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納める。給与の支給人員が常時10人未満なら、これを年2回にまとめられる。
1月から6月までの分が7月10日、7月から12月までの分が翌年1月20日だ。12回が2回になる。ただし、源泉徴収したもの全部がまとめられるわけではない。
以下の要件は、2026年9月21日に国税庁のタックスアンサーと質疑応答事例で確かめた。日付の計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で行った。個別の判断は所轄の税務署に確認してほしい。
原則は翌月10日
国税庁のページには、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければならないと書かれている。
起点は支払った日であって、給与計算の締め日ではない。3月締め4月払いの給与なら、4月に支払ったので5月10日が期限になる。ここを締め日で数えると1か月早く納めることになる。
毎月の作業なので、月次の手順に組み込む。第何営業日にやるかを決めておく考え方は月次の締めの記事と同じだ。
使えるのは給与の支給人員が常時10人未満
特例の要件は人数で決まる。国税庁のページには、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者と書かれている。
判定は平常の状態で行う。質疑応答事例には、常時使用される労働者の人員構成の実態で見るという趣旨が書かれている。繁忙期に臨時で雇った人がいても、平常の人員構成が10人未満なら要件を外れない扱いになる。
つまり、12月だけ12人になった年があっても、それだけで特例が使えなくなるわけではない。逆に、普段から10人を超えているなら、一時的に減っても特例は使えない。
人数が増えて要件に当てはまらなくなったら、届出を出す。源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書という書類がある。
まとめられない源泉徴収がある
見落とすのはここだ。特例の対象になる所得は限られている。
国税庁のページによると、対象になるのは給与や退職金から源泉徴収した所得税および復興特別所得税と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収した所得税および復興特別所得税に限られる。
原稿料やデザインの報酬、講演料は、この一定の報酬に入っていない。特例を使っている事業所でも、これらは翌月10日までに納める。
同じ月に給与と原稿料の両方があると、納付書が2種類になる。給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の納期特例分と、報酬・料金等の所得税徴収高計算書だ。
特例を取ったから全部年2回だと思い込むと、この分が納期限を過ぎる。不納付加算税の対象になる。
1月20日だけ10日ではない
日付を覚えるときに引っかかるのがここだ。上半期分は7月10日なのに、下半期分は翌年1月20日になる。
10日ではなく20日なので、年末年始の作業と重なることを見越して10日分の余裕が設けられている、という形になっている。7月と同じ10日だと思い込んで1月10日に納めても早すぎるだけで問題はないが、逆に7月20日と覚えていると10日遅れる。
納期限が土日なら休み明けに延びる
国税庁のページには、納期限が土曜日、日曜日、祝日などの休日に当たる場合は、その休日明けの日が納付期限となると書かれている。
支払予定表で使う前営業日への繰り上げとは逆方向だ。取引先への支払は前倒し、税金の納付は後ろ倒しになる。同じ表で管理すると混ざるので、列を分ける。支払側の考え方は支払予定表の記事に書いた。
式はWORKDAYで書ける。
=WORKDAY(DATE(年,7,10)-1,1,祝日!$A:$A)
-1した日を起点にして1営業日進めると、その日が営業日ならその日のまま、休日なら次の営業日が返る。
5年分を計算した。2026年は7月10日が金曜、翌1月20日が水曜でどちらもずれない。2027年は7月10日が土曜なので7月12日の月曜になる。2028年は翌1月20日が土曜で1月22日の月曜、2029年は翌1月20日が日曜で1月21日の月曜。2030年はずれない。
5年のうち3年で、どちらかの期限が動いた。カレンダーに固定の日付で入れていると、その年だけ違う日になる。
150日長く手元に置ける
特例を取ると、納めるまでの期間が延びる。
1月に支払った給与から源泉徴収した分は、原則なら2月10日が期限だ。特例なら7月10日になる。差は150日ある。
=DATE(2026,7,10)-DATE(2026,2,10)
毎月18万円を源泉徴収している事業所なら、半年分の108万円を7月10日にまとめて納めることになる。
資金繰りの面では手元に置ける期間が延びるが、使ってしまうと7月に困る。預かっている税金なので、別に置いておくか、少なくとも残高の見込みには入れておく。月末の残高を出す形は支払予定表と同じだ。
作業の回数は12回から2回に減る。1回15分かかるとして、年間で150分の差になる。2時間半だ。人数の少ない事業所では、これが効く。
申請書を出した月の翌月から
特例を使うには申請が要る。源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を税務署に出す。
適用が始まるのは、申請書を提出した月の翌月に支払う給与等からになる。9月に出したら、10月に支払う給与から対象だ。9月に支払った給与の分は、原則どおり10月10日までに納める。
承認の扱いも決まっている。税務署長から却下の通知がない場合、申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされる。返事を待つ必要はない。
年の途中から特例を使い始めると、最初の納付だけ期間が短くなる。10月から適用なら、10月から12月の3か月分を翌年1月20日に納める。
半年分の集計は、区分の列で分ける
納付の直前に半年分を足すのではなく、支払のたびに1行記録しておく。列は支払日、区分、人員、税額の4つでいい。
区分の列が要点になる。特例の対象になるものと、翌月10日に納めるものを分けるためだ。給与、賞与、退職金、報酬(税理士)のように書き分ける。
集計はSUMIFSで期間と区分を同時に指定する。
=SUMIFS($税額,$支払日,">="&DATE(2026,1,1),$支払日,"<="&DATE(2026,6,30),
$区分,"<>報酬(原稿料)")
区分に<>を付けると、その区分だけを除いた合計になる。特例に入らないものが複数あるなら、対象のものを足す形に書き換える。
15件の記録で計算した。上半期の特例分が1,155,210円、下半期が1,549,000円、特例に入らない原稿料の分が10,210円。年間の合計2,714,420円と一致する。
=IF(上半期+下半期+特例外=年間の合計,"合う","ずれ")
この検算を1行置いておく。合わないときは、区分の表記がぶれているか、日付が範囲から外れている。
納付書に書く人員の欄は、延べの人数になる。上半期の延べ人員は46人と出た。SUMIFSの合計する列を人員に変えるだけで出る。
踏んだ失敗
原稿料の源泉徴収を年2回にまとめてしまったことがある。特例を取っているから全部まとめられると考えていた。対象が給与と退職金と一定の報酬に限られると知らなかった。
給与の締め日で納期限を数えたこともある。3月締め4月払いの分を4月10日に納めようとして、1か月早いことに気づいた。起点は支払った日だ。
納期限をカレンダーに固定の日付で入れていた年もある。2027年の7月10日が土曜だったが、7月10日のままリマインダーが動いた。早く納める分には問題ないが、その日は銀行が開いていない。
預かった税金を運転資金と同じ口座で管理していたこともある。7月10日に108万円が必要になったときに足りなかった。年末調整で還付が出る年は、納付額が減ることもある。年末調整の計算は令和8年分の年末調整の記事に書いた。
確認していないこと
常時10人未満の判定について、具体的にどこまでが臨時雇用として除かれるかは読み切れていない。質疑応答事例に例が挙がっているが、自分の職場の形が当てはまるかは税務署に聞く。
納付が遅れたときの不納付加算税と延滞税の計算は扱っていない。
納付を電子で行う場合の期日の指定についても確認していない。ダイレクト納付で納期特例分の期日指定ができないという案内を見かけたが、条件を確かめていない。
一定の報酬の範囲も、税理士、弁護士、司法書士などとしか書かれていない。自分が払っている報酬が入るかどうかは、支払調書の区分と合わせて税務署に確認してほしい。
出典(2026年9月21日確認): 国税庁のタックスアンサー No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例、手続きの案内 A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請、質疑応答事例「給与等の支払を受ける者が常時10人未満であるかどうかの判定」。



