令和8年分の年末調整で、事務が真っ先に聞かれるのは扶養の境目だ。答えは4つある。扶養親族は給与収入123万円まで、源泉控除対象配偶者は160万円まで、19歳以上23歳未満の子は165万円まで申告書に書け、控除自体は188万円まで残る。
どれも同じ引き算から出ている。給与所得控除の最低額が65万円なので、そこから引いた金額が所得になり、国税庁が定めた所得の要件と比べるだけだ。
以下の控除額と要件は、2026年9月20日に国税庁の令和8年版「源泉徴収のしかた」で確かめた。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で行った。個別の判断は所轄の税務署か税理士に確認してほしい。
給与所得控除の表
令和8年分の給与所得控除額は、国税庁の資料にこう書かれている。
| 給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 190万円以下 | 65万円 |
| 190万円超360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万円超850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円 |
190万円以下がすべて65万円で一定になっている点が効く。パートやアルバイトの収入はほとんどこの範囲に入るので、所得は「給与収入マイナス65万円」で出る。
4つの境目は、65万円を引くと出てくる
国税庁の資料には、それぞれの区分の所得要件が書かれている。その所得に65万円を足すと、給与収入での境目になる。Excelで両方を計算して突き合わせた。
| 区分 | 所得の要件 | 給与収入の境目 |
|---|---|---|
| 扶養親族 | 58万円以下 | 123万円 |
| 源泉控除対象配偶者 | 95万円以下 | 160万円 |
| 源泉控除対象親族 | 100万円以下 | 165万円 |
| 特定親族特別控除 | 123万円以下 | 188万円 |
4つとも、国税庁が注意書きで示している給与収入の金額と一致した。資料には「配偶者の所得が給与所得だけの場合は、その年中の給与等の収入金額が160万円以下であれば合計所得金額が95万円以下」と書かれている。特定親族についても「給与等の収入金額が165万円以下であれば合計所得金額が100万円以下」とある。
だから、従業員から「いくらまで働ける?」と聞かれたら、まずどの区分の話かを確かめる。配偶者の話なのか、大学生の子の話なのか。区分が決まれば数字は1つに決まる。
特定親族特別控除は、所得で階段になる
19歳以上23歳未満の子については、扶養控除の範囲を超えても控除が段階的に残る。国税庁の表はこうなっている。
| 特定親族の合計所得金額 | 控除額 |
|---|---|
| 58万円超85万円以下 | 63万円 |
| 85万円超90万円以下 | 61万円 |
| 90万円超95万円以下 | 51万円 |
| 95万円超100万円以下 | 41万円 |
| 100万円超105万円以下 | 31万円 |
| 105万円超110万円以下 | 21万円 |
| 110万円超115万円以下 | 11万円 |
| 115万円超120万円以下 | 6万円 |
| 120万円超123万円以下 | 3万円 |
所得58万円以下なら特定扶養親族として63万円の扶養控除になるので、そこから上は控除が少しずつ減る形になる。123万円を超えるとゼロだ。
令和8年分でいう19歳以上23歳未満は、平成16年1月2日から平成20年1月1日までに生まれた人だと資料に明記されている。年齢で迷ったらこの生年月日で判定する。
申告書に出てくる「源泉控除対象親族」とは何か
令和8年分の扶養控除等申告書には、源泉控除対象親族という欄がある。聞き慣れない言葉なので、最初に見ると手が止まる。
国税庁の定義はこうだ。控除対象扶養親族、または特定親族のうち合計所得金額が100万円以下の人。つまり、これまでの扶養親族に加えて、19歳以上23歳未満で所得100万円以下の子がここに入る。給与収入なら165万円以下だ。
なぜこの区分ができたかというと、月々の源泉徴収に反映させるためだ。特定親族特別控除は年末調整で精算する控除だが、所得100万円以下の範囲なら月々の税額表にも織り込める。だから申告書の段階で書いてもらう。
書く側から見ると、子の見込み収入が165万円以下なら扶養控除等申告書に書き、165万円を超えて188万円までなら特定親族特別控除申告書に書く、という分かれ方になる。両方に該当する場合もあるので、資料には両方を見るようにと注記されている。
扶養控除の金額そのものは変わっていない。一般の控除対象扶養親族が38万円、特定扶養親族が63万円、老人扶養親族が48万円、同居老親等が58万円だ。老人の判定は70歳以上で、令和8年分では昭和32年1月1日以前に生まれた人になる。
判定の式を1本作っておく
聞かれるたびに表を見るのは面倒なので、判定の式を作った。A2に給与収入を入れる。
給与所得控除: =IF(A2<=1900000,650000,IF(A2<=3600000,A2*0.3+80000,
IF(A2<=6600000,A2*0.2+440000,IF(A2<=8500000,A2*0.1+1100000,1950000))))
合計所得: =MAX(0,A2-B2)
区分: =IF(C2<=580000,"扶養の範囲",IF(C2<=1230000,"特定親族の範囲","対象外"))
いくつか入れて計算させた。給与収入123万円で所得58万円、ここまでが扶養の範囲。1,231,000円にすると所得581,000円になり、特定親族の範囲に移った。188万円で所得はちょうど123万円、1,881,000円にすると123万1千円で対象外になった。境目の1円で区分が変わる。
この表を1枚作っておくと、相談されたその場で答えられる。金額を聞いて入れるだけだ。
基礎控除は所得で8段階
基礎控除も一律ではなくなっている。国税庁の表では最高95万円で、所得が上がるほど下がる。
所得132万円以下が95万円、132万円超336万円以下が88万円、336万円超489万円以下が68万円、489万円超655万円以下が63万円、655万円超2,350万円以下が58万円。そこから上は48万円、32万円、16万円と下がり、2,500万円を超えるとゼロになる。
この段階は年末調整の計算そのものに効くので、給与計算のソフトが令和8年分に対応しているかを先に確かめる。手計算で年末調整をしている職場はほとんどないと思うが、検算をするときはこの表を見る。
集める申告書
控除の種類ごとに、提出してもらう申告書が決まっている。資料の表から、年末調整で集めるものを拾うとこうなる。
扶養控除等申告書は、その年最初に給与の支払を受ける日の前日まで。基礎控除申告書と特定親族特別控除申告書は、その年最後に給与の支払を受ける日の前日まで。配偶者控除と配偶者特別控除も最後の給与日の前日までだ。
源泉控除対象親族に該当する人がいる場合は、特定親族特別控除申告書だけでなく扶養控除等申告書も見るように、と資料に注記がある。2つの書類で同じ人の情報を扱うので、どちらか片方だけだと漏れる。
配る前に、去年の申告書の控えを見て、19歳以上23歳未満になる子がいる人を先に把握しておく。その人には特定親族特別控除申告書も一緒に渡す。全員に全部配ると、書かなくていい書類まで戻ってきて確認の手間が増える。
踏んだ失敗
扶養の範囲を聞かれて、去年の数字のまま答えたことがある。金額が変わった年は、自分の記憶ではなくその年の資料を見る。私は判定の式を作った年から、口頭で数字を答えるのをやめた。
配偶者と子で境目が違うのに、同じ数字で説明したこともある。160万円と123万円は別の区分の数字だ。どちらの話かを先に確かめる。
書類の集め忘れも起きる。基礎控除申告書は全員から集めるものなので、出していない人がいると年末調整ができない。配った枚数と戻った枚数を数える表を作った。数え方は月次の締めの記事に書いた状態の式がそのまま使える。
確認していないこと
月々の源泉徴収をいつから新しい税額表で行うか、11月までと12月で扱いが変わるかは、今回読んだ資料の範囲では確認できなかった。給与計算のソフトの案内か、所轄の税務署に確認してほしい。
住民税の扱いもここでは書いていない。所得税と住民税では要件が違うことがある。
提出された申告書の数字が正しいかは、書いた本人にしか分からない。給与収入の見込みが変わったら出し直してもらう。数字の確かめ方はAIが書いた文書を照合する記事の考え方が使える。式で当たれるものは式で当たり、人にしか分からないものは本人に聞く。
出典(2026年9月20日確認): 国税庁「令和8年版 源泉徴収のしかた」のⅢ給与所得者の扶養控除等(異動)申告書およびⅣ源泉徴収に際して控除される各種控除、同庁の各種申告書のページ。



