マイナンバーで迷うのは、いつ集めてよくて、いつまで持っていてよいかだ。どちらも「その事務に必要かどうか」で決まる。
退職者12人分の廃棄できる日をExcelで出した。2人がすでに期限を過ぎていて、いちばん古い人は985日、2年8か月たっていた。廃棄できる日を計算していなければ、こうなる。
以下の要件は、2026年9月21日に個人情報保護委員会の事業者向けの資料と、国税庁の源泉徴収事務のパンフレットで確かめた。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で行った。個別の判断は所轄の税務署と個人情報保護委員会に確認してほしい。
求めてよいのは、その事務があるときだけ
個人情報保護委員会の資料にはこう書かれている。社会保障及び税等に関する手続書類の作成事務を処理するために必要がある場合に限って、従業員等に個人番号の提供を求めることができます。
手続書類の例として、源泉徴収票、支払調書、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届が挙がっている。
求める時期も決まっている。手続書類の作成事務が発生した時点が原則で、契約を締結した時点のようにその事務の発生が予想できた時点で求めることもできる、とある。
国税庁のパンフレットには、してはいけない例が書かれている。営業成績管理等の目的で提供を求めてはならない。社員番号や顧客管理番号としての利用は、仮に本人の同意があってもできない。
同意があってもできない、というところが重要だ。本人が承諾すれば使える、という考え方が通じない。
本人確認は、番号確認と身元確認の2つ
国税庁のパンフレットに例が2つ載っている。
マイナンバーカードなら1枚で済む。番号確認と身元確認の両方を兼ねる。
カードがない場合は2つ要る。通知カードで番号確認をして、運転免許証や健康保険の被保険者証などで身元確認をする。
注意書きもある。写真表示のない身分証明書等により身元確認を行う場合には、2種類以上必要です、とある。健康保険証だけでは足りない。
集めるときに、この確認をどの書類でやったかを記録に残す。あとから「確認したか」と聞かれたときに答えられる形にしておく。
集めるときに、何に使うかを伝える
取得の前にもう1つある。国税庁のパンフレットには、事業者はマイナンバーの提供を求めるに当たり、マイナンバーの利用目的を特定し、従業員や顧客に明示しなければなりません、と書かれている。
口頭で伝えるのではなく、書面で残す形にする。提出を求める用紙に印刷しておけば、集めるたびに明示したことになる。
書くのは、何の事務に使うかだ。給与所得の源泉徴収票の作成事務、健康保険・厚生年金保険の届出事務、雇用保険の届出事務、というように並べる。
あとから使い道を増やすときは、もう一度明示が要る。最初に想定できる事務を書き出しておくほうが手間が少ない。ただし、実際に必要のない事務まで書き並べるのは目的の特定にならない。
用紙には、本人確認をどの書類で行ったかを記録する欄も作る。番号確認と身元確認のそれぞれに、何を見たかを書く。提出された書類の写しを取るかどうかは、取扱規程で決めておく。
保管してよいのは、必要がある間だけ
個人情報保護委員会の資料には、必要がある場合だけ保管が可能、必要がなくなったら廃棄が必要です、と書かれている。
継続的に保管できる場合の例が3つ挙がっている。雇用契約等の継続的な契約関係にある場合は、翌年度以降も継続的に利用する必要が認められるので保管できる。従業員等が休職している場合は、復職が未定であっても雇用契約が継続しているので保管できる。土地の賃貸借契約等の継続的な契約関係にある場合も同様だ。
つまり、在職している人の分は持ち続けてよい。問題になるのは、退職した人と、契約が終わった取引先の分になる。
廃棄の条件は2つそろったときだ。国税庁のパンフレットにはこう書かれている。社会保障及び税に関する手続書類の作成事務を処理する必要がなくなった場合で、所管法令等において定められている保存期間等を経過した場合には、マイナンバーをできるだけ速やかに廃棄又は削除しなければなりません。
保存期間の例も出ている。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は7年間保管することとされており、その間は保管ができるが、その後はできるだけ速やかに廃棄または削除する必要がある。
廃棄できる日を式で出す
退職者の一覧に、廃棄できる日の列を足す。
起算日: =DATE(YEAR(退職日)+1,1,10)
廃棄できる日: =EDATE(起算日,保存年数*12)
あと何日: =廃棄できる日-TODAY()
状態: =IF(あと何日<0,"廃棄できる",IF(あと何日<=365,"1年以内","まだ保管"))
保存年数はセルに置いて全員が参照する。扶養控除等申告書なら7を入れる。
起算日をどこに置くかは、書類の提出期限の考え方による。上の式では退職した年の翌年1月10日にしている。ここは所轄の税務署に確認してほしい。
12人の退職者で計算した。まだ保管が9人、1年以内に廃棄できるのが1人、もう廃棄できるのが2人だった。
いちばん古いのは2016年4月に退職した人で、2024年1月10日に廃棄できるようになっていた。今日まで985日たっている。
この2人を見つけるのに、12行の表と4つの式で足りる。人数が100人を超えても同じだ。
廃棄した記録を残す
廃棄して終わりではない。個人情報保護委員会の資料には、個人番号若しくは特定個人情報ファイルを削除した場合、又は電子媒体等を廃棄した場合には、削除又は廃棄した記録を保存することとなります、と書かれている。
記録に残すのは、いつ、誰の分を、どの書類について、誰が廃棄したか。マイナンバーそのものは記録に書かない。
上の表に廃棄した日と担当者の列を足せば、そのまま記録になる。廃棄できる日の列と並べておけば、期限と実施のずれも見える。
紙の書類なら細断して、電子なら復元できない方法で消す。どの方法で消したかも残しておく。
安全管理措置は4つに分かれる
個人情報保護委員会の資料には、基本方針の策定と取扱規程等の策定に加えて、4つの安全管理措置が並んでいる。組織的、人的、物理的、技術的の4つだ。外的環境の把握も挙がっている。
国税庁のパンフレットには具体例が2つ載っている。組織的・人的安全管理措置として、マイナンバーを取り扱う担当者を明確にして、担当者以外がマイナンバーを取り扱わないようにする。物理的・技術的安全管理措置として、特定個人情報が記載された書類を施錠可能な棚に保管し、担当者以外はアクセスできない措置を講じる。
小さい職場でも、この2つは形にできる。誰が担当かを決めて、鍵のかかる場所に入れる。
取扱規程等の策定は、策定しなければなりませんと書かれている。方針より具体的な手順を文書にする。上の廃棄の手順も、規程に書く内容になる。
踏んだ失敗
退職者の書類を、在職者と同じ棚にまとめて置いていた。廃棄できる日を出していなかったので、いつ捨ててよいか誰も分からない。結果として置きっぱなしになった。上の985日はこの状態を数字にしたものだ。
本人確認の記録を残していなかったこともある。マイナンバーは集めたが、何の書類で確認したかを残していない。監査で聞かれて答えられなかった。
扶養控除等申告書の保存期間を5年だと思い込んでいた年もある。7年なので、2年早く捨てるところだった。書類ごとの保存期間を表にしてから、この手の思い込みが減った。年末調整で集める書類は令和8年分の年末調整の記事に書いた。
退職の手続きでマイナンバーの扱いを決めていなかったこともある。退職日から動く期限は3つあるが、そこに廃棄の期限を足していなかった。退職時の期限は退職者が出たときの記事に書いた。
確認していないこと
起算日をいつにするかは、今回読んだ資料では読み切れなかった。上の式は退職した年の翌年1月10日にしているが、書類の提出期限の考え方で変わる。
書類ごとの保存期間も、扶養控除等申告書の7年しか確認していない。源泉徴収簿や支払調書の控えは別の年数になる。自分の職場で扱っている書類を一覧にして、それぞれ確認してほしい。
国税庁のパンフレットは平成28年7月末現在の法令に基づいて作成されたものだ。個人情報保護委員会の資料は令和7年4月版だった。法令が変わっている可能性があるので、実際に運用を決めるときは最新の版を見る。
委託先の監督と再委託の許諾についても扱っていない。給与計算を外部に委託している場合は、そちらの規程も要る。
電子データの保存そのものの要件は電子取引データの記事に書いたが、マイナンバーが入る書類はさらに安全管理措置が重なる。
出典(2026年9月21日確認): 個人情報保護委員会事務局「はじめてのマイナンバーガイドライン(事業者編)」令和7年4月版、国税庁「源泉徴収事務・法定調書作成事務におけるマイナンバー制度」のパンフレット。



