国税庁が2026年9月に出した令和7年分の民間給与実態統計調査で、1年を通じて勤めた人の平均給与は487万円だった。ところが給与階級ごとの人数から真ん中の人を探すと、年収は約419万円になる。平均より少ない人は60.4%いる。
年収400万円の人は上位53.0%で、真ん中より下に入る。この数字は国税庁の表の境目そのままなので、仮定を置かずに出る。
数字は国税庁の令和7年分 民間給与実態統計調査の概要と、同じ調査の統計表のページにあるExcelの第3表と第6表から取った。どちらも2026年10月6日に確かめた。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で確認、2026年10月6日。配布している表に年収と区分を入れると、上位何%かが出る。
平均給与487万円は、12か月勤めた5,163万人の額面の平均
487万円が誰の平均なのかを先に押さえておく。調査結果報告の用語の説明では、「1年を通じて勤務した給与所得者」は令和7年の1月から12月まで続けて勤め、給与を12か月分受けた人を指す。年の途中で入った人は外れる。対象は民間の事業所なので、公務員も入っていない。
給与は1年間の給料・手当と賞与の合計で、税や社会保険料を引く前の額だ。通勤手当などの非課税分は入っていない。源泉徴収票でいえば「支払金額」の欄に近い。国税庁の通勤手当の非課税限度額に関するQ&Aの問15に、支払金額の欄は非課税の通勤手当を除いた額を書く、とある。
人数は5,163万人で、平均は前の年より1.9%、9万1千円上がった。検索で上に出るページには、前の年の令和6年分の数字のままのものがまだある。自分の年収と比べるなら、令和7年分を使う。
年収の中央値はいくらか。国税庁の表にはないので、100万円刻みの人数から出した
国税庁は中央値を出していない。31ページの調査結果報告に「中央値」という語は1度も出てこない。出ているのは、100万円刻みの給与階級ごとの人数と、その階級の平均給与だ。
全体の5,163万人を年収の低い順に並べると、400万円以下までで47.0%、500万円以下までで62.3%になる。真ん中の50%は400万円超500万円以下の階級に入る。ここまでは表を足すだけで確実に言える。
階級の中のどこかは、人の並び方を決めないと出ない。私は2通り試した。1つは階級の中に人が均等に並んでいると置くやり方で、419.6万円になる。もう1つは、階級の平均給与に合うように人数を傾けて置くやり方で、418.9万円。差は1万円もない。

傾けて置くのは、均等だと階級の平均と合わないからだ。均等なら400万円超500万円以下の平均はちょうど450万円になるはずだが、表では449.2万円。1,000万円超1,500万円以下は、均等なら1,250万円のところ表では1,187.6万円で、下のほうに人が多い。この差から階級ごとの傾きを出して、階級の中の割合を次の式で出している。
T = 階級の中での位置(下限で0、上限で1)
階級の中で年収以下の割合 = T + k*(T^2-T)
k = 6*(階級の平均 - 階級の真ん中)/階級の幅
kが0なら均等と同じになる。kが正だと上に、負だと下に人が寄る。kは-1から1の間に抑えた。それを超えると、階級の中の人数が負になる場所が出るためだ。
年収400万円は上位53.0%、500万円は上位37.7%
自分の年収が上位何%かを知りたいとき、階級の境目の年収なら表を足すだけで答えが出る。300万円は上位68.5%、400万円は上位53.0%、500万円は上位37.7%、600万円は上位25.8%、800万円は上位12.6%、1,000万円は上位6.6%。ここには仮定が入らない。
境目の間の年収は、さっきの式で階級の中を割る。平均の487万円は上位39.6%になる。均等に置いても39.7%で、ほとんど変わらない。
配布した表の1枚目のB4に年収、B5に区分を入れると、B10に上位何%が出る。年収500万円で区分を「女性」にすると上位18.9%、「正社員」にすると上位49.1%、「男性」にすると上位52.0%になった。同じ500万円でも、男性の中では真ん中より少し下、女性の中では上位2割に入る。
2,500万円を超える年収は、上の端の階級に上限がないので位置を出せない。表には「上位0.4%以内」とだけ出る。
年収1,000万円超の6.6%が、給与総額の20.4%を受け取っている
平均が中央値より68万円高いのは、上のほうにいる人の給与が大きいからだ。どれくらい大きいかを、階級ごとの給与総額で数えた。
1,000万円を超える4つの階級にいる人は339万5千人で、全体の6.6%。その人たちの給与を足すと51兆3,201億円で、全体の251兆2,570億円の20.4%になる。15人に1人が、給与の5分の1を受け取っている計算だ。
役員を抜くと平均がどう動くかも見た。第6表には役員だけの表があり、397万1千人で平均786.3万円。全体からこの人数と給与を引くと、平均は461.7万円になった。役員がいるだけで、平均が25.0万円上がっている。
男性・女性・正社員で分けると、平均と中央値の差は38万円から246万円
区分ごとに同じ計算をした。中央値は傾けて置いたほうの数字で、平均より下の人の割合も同じやり方で出している。
| 区分 | 人数 | 平均 | 中央値 | 差 | 平均より下 | 1,000万円超の人 | 1,000万円超が受け取る給与 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 5,163万人 | 486.6万円 | 418.9万円 | 67.7万円 | 60.4% | 6.6% | 20.4% |
| 男性 | 2,934万人 | 596.7万円 | 512.4万円 | 84.3万円 | 62.2% | 10.2% | 26.1% |
| 女性 | 2,229万人 | 341.8万円 | 303.4万円 | 38.4万円 | 57.3% | 1.8% | 7.5% |
| 正社員 | 3,422万人 | 559.3万円 | 495.2万円 | 64.1万円 | 61.3% | 7.0% | 17.0% |
| 正社員以外 | 1,305万人 | 209.5万円 | 163.9万円 | 45.5万円 | 59.7% | 0.5% | 3.8% |
| 役員 | 397万人 | 786.3万円 | 540.5万円 | 245.8万円 | 67.7% | 22.9% | 56.8% |
どの区分でも、平均より下の人は57%から68%いる。平均と比べて「自分は平均より下だ」と感じる人が多いのは、6割前後の人が実際に平均より下にいるからで、感じ方の問題ではない。
役員は差が246万円ある。1,000万円超の22.9%が、役員の給与の56.8%を受け取っている。役員の中央値540.5万円は、正社員の中央値より45万円高いだけだ。
正社員の中央値は495.2万円で、正社員なら年収500万円でほぼ真ん中になる。正社員、正社員以外、役員の3つを足すと、全体より38万7,194人少ない。どの区分にも入らない人がいるが、内訳は表にない。

上位何%を出すときに取り違えやすい2つ
1つ目は、階級を下限で引いてしまうことだ。国税庁の階級は「400万円超500万円以下」のように上限で区切ってある。下限の列にMATCHの近似一致をかけると、ちょうど500万円の人が「500万円超600万円以下」に入る。表の1枚目の30行目にこの引き方を並べてあり、500万円を入れると「区間が1つずれる」と出る。
ずれた階級の累積を読むと、500万円以下の割合が74.2%になる。上位25.8%で、正しい37.7%より12ポイント上に見える。階級は =COUNTIF(上限の列,"<"&年収)+1 で、上限より小さい階級の数に1を足して引くと合う。
2つ目は、手取りで比べてしまうことだ。額面500万円の人の手取りが390万円だとして、390万円を入れると上位54.7%になる。額面なら37.7%なので、17.0ポイント下に出る。給与明細の「差引支給額」を12か月足した数字は、国税庁の数字とは比べられない。
手元に源泉徴収票があれば、支払金額の欄をそのまま使える。年の途中で前の会社の分を合わせて年末調整した人の源泉徴収票は、国税庁の法定調書の作成と提出の手引によると前の会社の分も支払金額に入っている。その年は12か月同じ会社に勤めた人の統計とは条件が違うので、比べるなら翌年の分を使う。
階級の中の置き方で、正社員以外の中央値は15万円動く
全体の中央値は、均等に置いても傾けて置いても1万円も変わらなかった。正社員以外では違った。均等だと179.4万円、傾けると163.9万円で、15.5万円の差が出る。
真ん中が100万円超200万円以下の階級に入り、正社員以外のその階級の平均が138.8万円と、真ん中の150万円より下に寄っているためだ。kは-0.67になる。年収130万円や150万円の手前で働き方を決めている人が多い階級なので、下に寄るのは自然だと思う。均等に置くと、この寄りを無視することになる。
100万円以下の階級では、逆の問題が出た。平均が80.2万円で、真ん中の50万円よりずっと上にある。kは計算すると1.81になり、1で止めた。kが1のとき階級の平均は66.7万円までしか上がらないので、この階級の中だけは表の平均と合っていない。実際には階級の上のほうにもっと人が寄っているので、100万円未満の年収で出した上位何%は、実際より小さく出ているはずだ。
この2つは、配布した表の「3_国税庁の表」の灰色の列で傾きを見ると分かる。区間の境目の割合は、どちらの置き方でも国税庁の表どおりだ。
年収の額面が変わったときに動く扶養の線は、令和8年分の年末調整の記事と被扶養者の130万円の記事に書いた。
確かめていないこと
年齢別の中央値は出していない。調査結果報告に年齢階層別の平均給与はあるが、全国計表の第1表から第19表に、年齢と給与階級を掛け合わせた人数の表はなかった。
正社員、正社員以外、役員の3つに入らない38万7,194人が誰なのかは確認していない。用語の説明では正社員と正社員以外の両方から青色事業専従者を除いているので、その人たちが入っていると思うが、表で確かめてはいない。
標本調査なので、数字には誤差がある。概要のページには事業所規模ごとの標準誤差率が載っているが、中央値や上位何%の誤差の幅は出していない。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査など、ほかの統計の中央値とは比べていない。対象者も給与の範囲も違うので、同じ年収でも別の順位になるはずだ。



