給与計算の端数処理。残業を日ごとに切り捨てると100人で年386万円減る

2026-09-21仕事の型

給与計算で端数が出る場所は4つある。残業時間、1時間あたりの賃金額、社会保険料、源泉所得税。この4つで丸め方が全部違う。

いちばん金額が動くのは残業時間だ。100人分の残業を12か月作って計算したら、日ごとに15分未満を切り捨てた場合と、通達どおり1か月の合計で丸めた場合とで、年に386万円の差が出た。

通達どおりに出した額との差。残業を日ごとに15分切り捨てると3,866,316円、時給を1円未満切り捨てると20,892円

以下、賃金の端数は昭和63年3月14日の基発第150号「賃金計算の端数の取扱い」、社会保険料は日本年金機構「保険料の計算方法について」、条文はe-Gov法令検索で2026年9月21日に確かめた。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で行い、100人分の残業は式を確かめるために作った架空のものだ。

5分の遅刻を30分として引くのは違法と書いてある

通達の1番目に出てくるのが遅刻の話だ。5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット、つまり25分についてのカットが賃金の全額払いの原則に反し、違法だとしている。

通達は続けて、こうした取扱いを就業規則に定める減給の制裁として労働基準法第91条の制限内で行う場合には、全額払いの原則には反しないとしている。第91条の制限は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えず、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えないことだ。

つまり、遅刻を切り上げて引くこと自体は、制裁として就業規則に書いてあり、その枠に収まっていれば通る。書いていなければ通らない。端数処理のつもりでやっていることが、実は制裁の話になっている。

30分で丸めていいのは、1か月の合計だけ

通達の2番目が割増賃金の計算だ。次の3つは事務簡便を目的としたものと認められるから、法第24条および第37条違反としては取り扱わない、としている。

1つ目は、1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。

ここは条件が3つ重なっている。1か月の合計であること、各々の種類ごとであること、1時間単位に丸めること。日ごとに丸めるとは書いていないし、15分単位とも書いていない。

2つ目は、1時間あたりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。3つ目は、1か月における各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じたとき、2つ目と同じようにすること。

100人で1年分を計算して、386万円の差が出た

実際に動かした。100人に月給を割り当て、営業日20日分の残業を分単位で作って、12か月分を出した。月平均所定労働時間は160時間とした。

通達どおりに出すと、年の割増賃金は32,092,698円になった。1か月の残業分を合計して時間に直し、30分未満を切り捨てて時間単位にしている。

同じデータを、日ごとに15分未満を切り捨ててから足すと28,226,382円。差は3,866,316円で、1人あたり年38,663円になる。平均の残業時間で見ると、月12.7時間が11.17時間に減っていた。12%が消える。

1日の端数は最大で14分だ。小さく見えるが、月20日で最大280分、4時間半を超える。それが12か月分たまる。

時給の丸め方も比べた。月給を160で割った1時間あたりの賃金額を、通達どおり四捨五入せず切り捨てにすると、年20,892円の差になった。1人あたり209円だ。同じ「切り捨て」でも、時間を削るのと単価を削るのとで185倍違う。

単価のほうは金額としては小さいが、通達が50銭未満切り捨てと書いている以上、切り捨てで統一する理由はない。ExcelならROUNDをそのまま使えばいい。

時給   =ROUND($B2/160,0)
割増単価 =ROUND($C2*1.25,0)
月の時間 =ROUND(SUM($D2:$W2)/60,0)
割増額  =ROUND($E2*$F2,0)

残業時間そのものの数え方は週40時間と月60時間を二重に数えずに出す話に、日をまたぐ勤務の扱いは夜勤の計算に書いた。

ちょうど50銭のとき、賃金は切り上げ、社会保険料は切り捨て

社会保険料は通達の対象ではない。日本年金機構が端数処理の決まりを出している。

事業主が給与から控除する場合は、被保険者負担分の端数が50銭以下なら切り捨て、50銭を超える場合は切り上げて1円。被保険者が事業主に現金で支払う場合は、50銭未満なら切り捨て、50銭以上なら切り上げて1円。

1円未満の端数が出たとき、賃金なら50銭未満切り捨て、社会保険料なら50銭以下切り捨て、源泉所得税なら1円未満切り捨て

同じ50銭でも、給与から引くなら切り捨て、現金でもらうなら切り上げになる。境目が「以下」と「未満」で書き分けられている。

現金でもらう場合の決まりは、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第3条第1項がもとになっている。同じ条に「ただし、特約がある場合には、この限りでない」とあり、年金機構も事業主と被保険者の間で特約があれば特約に基づいて処理できるとしている。就業規則や労使の取り決めで別の丸め方を決めているなら、そちらが優先する。

折半額が5,450円50銭になったとする。給与から引くなら5,450円、現金でもらうなら5,451円。1円だが、100人分が毎月続く。

納入告知書の保険料額は、被保険者ごとの保険料を合算してから1円未満を切り捨てる。1人ずつ丸めてから足すのではない。だから給与から引いた合計と納付額はずれる。ずれること自体は正しいので、合わせにいかなくていい。

Excelでは、給与から控除する場合の丸めは次のように書ける。

=ROUNDUP(MAX($A2-0.5,0),0)

0.5を引いてから切り上げると、50銭ちょうどが切り捨てになる。MAXを挟んでいるのは、金額が50銭以下のときにROUNDUPがマイナス方向へ動いて-1を返したからだ。実務でそこまで小さい保険料は出ないが、式としては塞いでおく。

源泉所得税は1円未満を切り捨てる

源泉徴収する所得税は、国税通則法第119条第2項と同法施行令第40条第2項で、1円未満の端数を切り捨てることになっている。第119条第1項の100円未満切り捨てではない。

報酬から10.21%を引くときに端数が出る。100,000円なら10,210円で割り切れるが、38,500円なら3,930.85円になる。1円未満を切り捨てて3,930円。四捨五入して3,931円にすると、納付額が1円多くなる。

納期の特例を使って半年分をまとめて納めるなら、1件ずつ切り捨てた額を足す。合計してから丸めるのではない。特例そのものの条件は源泉所得税の納期の特例に書いた。

100円未満を丸めるなら、就業規則に書いてから

通達の3番目は、1か月の賃金支払額の端数だ。100円未満の端数が生じた場合に50円未満を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと。もうひとつ、1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。

この2つは賃金支払の便宜上の取扱いと認められるから第24条違反としては取り扱わない、としたうえで、通達は「これらの方法をとる場合には、就業規則の定めに基づき行うようにされたい」と書いている。1番目と2番目にはこの一文がない。

Excelでは=ROUND($A2/100,0)*100で出る。284,450円は284,500円に、284,449円は284,400円になる。

切り上げた分は会社が多く払うことになるが、切り捨てた月は少なく払っている。年で見ればほぼ相殺される。事務の手間を減らすための決まりであって、得をするためのものではない。

なお、日ごとに30分単位で切り上げと切り捨てを交互にするような処理が通達の枠に入るかどうかは確認していない。通達に書いてあるのは1か月の合計に対する処理だけなので、日ごとに何かをするなら、削った分を戻せているかを自分で数えることになる。

動作確認: Microsoft 365のExcel(バージョン16) / Windows 11 / 2026-09-21確認

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