傷病手当金の1日あたりの額は、支給開始日の月までの12か月の標準報酬月額を平均し、30で割って10円単位に丸め、その3分の2を1円単位に丸めた額になる。待期は働けない日が続けて3日あれば済み、有給休暇の日も土日祝の公休日もその3日に入る。支給は4日目からだ。
丸めは2回ある。最後に1回だけ丸めると、架空の100人のうち71人で日額が1円から3円ずれた。待期を「最初に休んだ3日」で数えると、架空の100件のうち37件で支給日数が変わった。
条文と数字は、協会けんぽの傷病手当金のページ、e-Gov法令検索の健康保険法第99条、厚生労働省の支給期間の通算化のページで、どれも2026年10月5日に確かめた。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で確認、2026年10月5日。100人と100件は、ずれ方を数えるために作った架空のデータだ。
傷病手当金の計算は、30で割ったところと3分の2を掛けたところで2回丸める
健康保険法第99条第2項を頭から読むと、手順は3つに分かれる。
- 支給を始める日の属する月以前の、直近の継続した12か月の標準報酬月額を平均する。
- その30分の1を出す。5円未満は切り捨て、5円以上は10円に切り上げる。
- その3分の2を出す。50銭未満は切り捨て、50銭以上は1円に切り上げる。
Excelではこう書いた。E9に平均が入っている。
30分の1 =ROUND(E9/30,-1)
日額 =ROUND(E10*2/3,0)
ROUNDは正の数なら5以上を切り上げるので、条文の「5円以上を10円に切り上げ」とそのまま重なる。ROUNDDOWNやINTを使うと、10円単位のところで少なく出る。
協会けんぽのページに計算例が1つ載っている。支給開始日が令和8年2月15日で、標準報酬月額が令和7年3月から8月まで16万円、9月から令和8年2月まで18万円の人だ。平均は17万円。30で割ると5,666.66…円で、10円単位にして5,670円。3分の2で3,780円になる。
配布した表の1枚目に同じ12か月を入れると、日額の欄が3,780円になった。協会けんぽの例と一致したので、この2つの式を残りのシートにも使っている。

12か月の取り方で一度迷った。支給開始日の月を入れるかどうかだ。条文は「属する月以前」なので入れる。協会けんぽの例も、2月15日に始まる人に令和7年3月から令和8年2月までの12か月を使っている。開始月を外して前の12か月を取ると、まるごと1か月ずれる。
1回だけ丸める式だと、100人のうち71人で日額が合わない
平均に3分の2を掛けて30で割り、最後に1回だけ丸める式をよく見かける。=ROUND(E9*2/3/30,0) の形だ。電卓に続けて打つと、自然にこの順になる。
17万円の例では3,777.77…円を丸めて3,778円。正しい3,780円より2円少ない。
架空の100人で数えると、71人で日額が変わった。多く出る人が34人、少なく出る人が37人で、差は1人あたり最大3円。1日分のずれを絶対値で足すと158円だった。
差が3円までに収まる理由は、丸める場所にある。10円単位の丸めで30分の1の額が動くのは最大5円で、3分の2を掛けると3.33円になる。5,666.66円が5,670円に押し上げられた3.33円の3分の2、つまり2.22円が日額に残り、1円単位で丸めて2円の差になった。最後に1回だけ丸める式では、この押し上げが起きない。
1日2円でも、休んだ日数を掛ければ申請のたびに数十円ずれる。会社で見込み額を本人に伝えていたなら、届いた支給決定の額と合わない理由を聞かれることになる。私は式を条文の順に合わせておくほうを選んだ。
加入して12か月に満たない人は、32万円と比べて低いほうを使う
条文の但し書きは、標準報酬月額が定められている月が12か月に満たない場合を別に扱っている。次の2つのうち低いほうの3分の2を使う。
- 加入してからの各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1。
- 支給を始める日の属する年度の前年度9月30日における、全被保険者の標準報酬月額を平均した額の30分の1。
協会けんぽのページでは、2つ目の額は支給開始日が令和7年3月31日以前なら30万円、令和7年4月1日以降なら32万円とある(2026年10月5日確認)。令和8年4月以降に始まる人について別の額は、そのページには載っていなかった。健康保険組合に入っている人の額は組合ごとに違い、確認していない。
架空の100人のうち、12か月に満たない人は17人いた。そのうち9人は平均が32万円を超えていて、32万円のほうで計算することになる。
たとえば加入して2か月で、標準報酬月額が2か月とも44万円の人。平均のまま出すと30分の1が14,670円、日額は9,780円になる。32万円で出すと30分の1が10,670円、日額は7,113円。1日2,667円、30日で80,010円の差だ。
比べるのを忘れて平均をそのまま使うと、9人全員が多く出る。1日分のずれの合計は25,630円、いちばん大きい人で6,287円だった。7か月だけ加入していて途中で56万円から71万円に上がった人で、平均は60万円を超えていた。
もう1つ、条文には「被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る」とある。健康保険組合から協会けんぽの会社に移った人は、前の組合で決まった月は12か月に数えない。転職して半年なら、前の会社の月を足して12か月にはならない。検索で上位に出たページのうち、私が開いたものには書かれていなかった。
今の標準報酬月額だけで出すと、66人で日額が変わった
給与ソフトの画面には、今の標準報酬月額が1つだけ出ている。それを30で割って3分の2を掛けたくなる。12か月の平均を出すには、過去の決定通知を1年分たどる手間がかかるからだ。
架空の100人は、支給開始日を2026年10月15日にした。12か月は2025年11月から2026年10月まで。9月に定時決定で等級が変わった人がいる。定時決定の流れは算定基礎届の記事に書いた。
直前月の額だけで出すと、100人のうち66人で日額が変わった。ほかの2つの間違いと並べるとこうなる。
| 出し方 | 日額が変わる人 | 1日分のずれの合計 | いちばん大きいずれ |
|---|---|---|---|
| 今の標準報酬月額だけ | 66人 | 57,619円 | 8,667円 |
| 最後に1回だけ丸める | 71人 | 158円 | 3円 |
| 32万円と比べ忘れる | 9人 | 25,630円 | 6,287円 |
今の額だけで出したずれには、12か月に満たない人の分も混ざっている。12か月そろっている83人に絞ると、変わったのは51人。48人が多く出て、少なく出たのは3人だった。1日分のずれの合計は25,309円。
具体的に1人挙げる。2025年11月から2026年8月まで26万円、9月と10月が28万円の人だ。平均は263,333円で、30分の1が8,780円、日額は5,853円になる。今の28万円だけで出すと30分の1が9,330円、日額は6,220円。1日367円、30日で11,010円多く見積もることになる。
多く出る人がほとんどなのは、定時決定で上がる人が多いからだ。9月に上がった人は、10月に休み始めると12か月のうち新しい等級が2か月しかない。残りの10か月は古い等級のままなので、平均は今の額よりかなり低くなる。
いちばん大きくずれたのは、途中で随時改定が入った人だった。41万円が6か月、50万円が4か月、56万円が2か月。平均は46万5千円で日額10,333円、今の56万円だけで出すと12,447円になる。1日2,114円の差だ。昇給の直後に休む人ほど、今の額だけで見積もると外れる。
待期3日は、有給の日も土日も入れて続けて3日
条文は、労務に服せなくなった日から数えて3日を経過した日から支給するとしている。協会けんぽのページは、待期には有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれ、給与の支払いがあったかどうかは関係ない、としている。
続いていることが条件だ。協会けんぽのページには、2日休んだあと3日目に仕事をした場合は待期は成立しない、とある。仕事中に具合が悪くなって早退したなら、その日が待期の1日目になる。
配布した表の3枚目では、働けなくなった日から21日分を記号で並べた。欠勤、有給、公休日、働けた日の4つだ。欠勤か有給か公休日が3日続いたところで待期が終わり、その後の欠勤と公休日を支給日数に数える。有給の日は給与が出るので数えない。
例を2つ挙げる。1件目は2026年4月3日の金曜に有給を取って休み、土日を寝て過ごした人だ。金土日で待期が済む。月曜も有給なので支給はなく、火曜から金曜の欠勤4日と土曜の公休日1日、合わせて5日が支給の対象になった。
2件目は2026年6月5日の金曜に欠勤し、土曜も寝込んで、日曜はいったん回復して働ける状態に戻った人だ。月曜からまた休んで、そのまま3週目まで続いた。待期は月火水の3日で済み、木曜からが支給の対象になる。
待期を取り違える数え方を3つ試したら、どれも日数が動いた
同じ100件を、間違えやすい3つの数え方でも数えた。
1つ目は、続いていなくても最初に休んだ3日で待期を終える数え方。37件で支給日数が変わり、合計は887日から957日へ70日増えた。100人の日額を当てはめると、支給額の差は479,675円になる。さきほどの6月の人では、金曜、土曜、月曜の3日で待期が済んだことにしてしまい、火曜と水曜の2日分、7,186円が多く出る。
この数え方は、日数が増えることはあっても減ることはない。最初に休んだ3日は、続けて休んだ3日より前か同じ日に必ずそろうからだ。
2つ目は、有給の日を待期に入れない数え方。45件で日数が変わり、合計は792日。95日少ない。4月の人は、有給の金曜と月曜が待期から外れて、待期が済むのが木曜までずれる。支給の対象は5日から2日になった。
3つ目は、公休日を待期に入れない数え方。土日をはさむと数え直してしまう形で、54件で日数が変わり、合計は760日。127日少ない。100件のうちいちばん多くずれた数え方だった。
私の手元で一番起きやすいと思うのは3つ目だ。勤怠の表では土日は空欄になっていて、休んだ日として並ばない。勤怠の表から待期を数えるときは、空欄の土日を病気で働けなかった日として埋めてから数える。
給与が出た日は、日額より少なければ差額が出る
協会けんぽのページは、給与が支払われている間は支給されないとしたうえで、給与の支払いがあっても傷病手当金の額より少ない場合はその差額が支給される、としている。
表の1枚目のE14に、その日に出た給与の1日分を入れると、支給される額が出る。式は =MAX(0,E11-E14) だ。日額3,780円の人に1日1,000円の手当が出ていれば、2,780円になる。有給の日のように日額以上が出ていれば0になる。
1日分の給与をどう割り出すかは、会社の給与の決め方によって変わる。月給を日割りにするのか、その日の手当だけを見るのかは、協会けんぽの支部に聞いて決めた額を入れる。
支給期間は、2022年1月から通算1年6か月
厚生労働省のページによると、令和4年1月1日から、支給期間が支給開始日から通算して1年6か月になった。途中で働いて支給されない期間があれば、その分は繰り越せる。令和3年12月31日の時点で支給開始日から1年6か月が経っていないもの、つまり令和2年7月2日以降に支給が始まったものが対象になっている。
改正の前は、支給開始日から1年6か月が過ぎればそれで終わりだった。復職して再発した人は、復職していた期間の分だけ短くなっていた。今は支給された日を足していく形なので、復職と休職を繰り返す人ほど数え方の違いが大きく出る。
退職したあとも受け取り続けられる場合がある。協会けんぽのページでは、退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態であることが条件になっている。退職日に出勤すれば、その日は働けない状態に当たらない。
確かめていないこと
通算1年6か月を日数に直す具体の数え方は確認していない。支給を始めた日から暦で1年6か月を数えてその日数を上限にする、という説明を検索結果で見かけたが、厚生労働省の通知の本文は読んでいない。
協会けんぽの会社から協会けんぽの会社へ、間を空けずに転職した人の12か月の数え方は確認していない。保険者が同じなので通して数えるように読めるが、協会けんぽのページには書かれていなかった。
出産手当金、障害厚生年金、老齢年金を受けている人との調整は確認していない。協会けんぽの傷病手当金のページには載っておらず、別のページか条文を当たる必要がある。
架空の100件は、土日だけを公休日にしていて祝日を入れていない。祝日が入れば公休日が増えるので、公休日を待期に入れない数え方のずれはもっと大きくなるはずだが、数えてはいない。



