懸賞で当たった100万円には税金がかかる。一時所得になり、100万円から特別控除の50万円を引いた50万円の、さらに半分の25万円が給与の所得に足される。2026年に受け取った独身の会社員なら、所得税と住民税は年収400万円で3万7,700円、年収665万円で10万6,500円増える。
同じ100万円で2.8倍の差がついたのは、足された25万円で合計所得金額が489万円を超え、所得税の基礎控除が104万円から67万円に下がるからだ。年収でいうと635万2,000円から665万5,556円の人がこの線にかかる。懸賞金が90万円までなら、会社員は所得税の確定申告をしなくてよい。ただし年末調整の基礎控除の判定には入り、住民税の申告も要る。
条文はe-Gov法令検索の所得税法第22条、第34条、第36条、第121条、第204条、第205条、所得税法施行令第320条から第322条、地方税法第313条と第317条の2、第317条の3で読んだ。国税庁はタックスアンサーのNo.1490とそのQ&A、No.1903、No.1199、No.2813、所得税基本通達の第121条関係と第205条関係、住民税は芦屋市のFAQを見た。どれも2026年10月21日に確認した。
前提は、独身で扶養なし、賞与なし、協会けんぽ東京支部の令和8年度の料率、40歳未満、東京23区。懸賞金は2026年に現金で受け取り、ほかに一時所得はなく、払った額は0円とした。社会保険料と給与所得は年収の手取り早見表と同じ式で出した。Pythonで書き方を変えた2通りの計算を作り、申告しない場合も含めて、年収400万〜800万円と懸賞金50万〜300万円を1万円刻みで組み合わせた10万1,052件を突き合わせ、不一致は0件だった。
懸賞の100万円は一時所得。50万円を引いて、半分の25万円が給与に足される
所得税法第34条の一時所得は、営利目的の継続的行為から生じたものでも、労務や資産の譲渡の対価でもない一時の所得だ。No.1490は懸賞や福引きの賞金品、競馬の払戻金、生命保険の一時金などを例に挙げ、業務に関して受ける懸賞は外す。
計算は2段だ。第34条第2項と第3項で、その年の総収入金額から収入を得るために直接払った金額と特別控除の50万円を引き、0円より下にはならない。第22条第2項第2号が、その2分の1を総所得金額に入れる。
100万円の懸賞なら一時所得は50万円、総所得金額に入るのは25万円だ。住民税も地方税法第313条第2項で同じ25万円が足される。宝くじの当せん金は所得税がかからず、この計算に入らない。宝くじの当せん金の税金で確かめた。
懸賞金の税金はいくらか。年収400万〜800万円で並べた
増える所得税と住民税の合計だ。どれも確定申告が要る額になる。
| 年収 | 100万円 | 150万円 | 200万円 | 300万円 |
|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 37,700 | 75,500 | 113,300 | 210,300 |
| 500万円 | 42,700 | 93,200 | 143,700 | 244,800 |
| 550万円 | 50,500 | 101,000 | 151,600 | 332,500 |
| 600万円 | 50,500 | 101,100 | 215,700 | 367,800 |
| 650万円 | 99,000 | 175,000 | 251,100 | 403,200 |
| 665万円 | 106,500 | 182,500 | 258,600 | 410,700 |
| 700万円 | 76,100 | 152,100 | 228,200 | 380,300 |
| 800万円 | 76,000 | 162,300 | 238,300 | 390,400 |
住民税の増え方は年収で変わらず、足された額の10%で、100万円なら2万5,000円だ。年収400万円の人は課税所得が112万円ほどで、25万円にも5%しかかからず、増えるのは1万2,700円。年収800万円の人は20%の段で、復興特別所得税を含めた20.42%がかかり、5万1,000円増える。
年収636万〜665万円の人は、100万円の懸賞で基礎控除が37万円下がる
2026年分の所得税の基礎控除は、合計所得金額で段が分かれる。No.1199の表では、489万円以下が104万円、489万円超655万円以下が67万円、655万円超2,350万円以下が62万円。この合計所得金額には、一時所得の2分の1も入る。
年収665万円の給与所得は488万5,000円で、104万円の線まで5,000円しか残っていない。懸賞で100万円を受け取ると合計所得金額は513万5,000円になり、基礎控除は67万円に下がる。課税所得は25万円ではなく62万円増え、330万円を超えた部分には20%がかかる。所得税は8万1,500円増え、年収600万円の人の2万5,500円の3.2倍だった。
1円刻みで探すと、100万円で線にかかるのは年収635万2,000円から665万5,556円。200万円なら1万円刻みで573万円から、300万円なら511万円からかかった。665万5,556円は、懸賞がなくても1円超えると手取りが減る線で、年収の手取り早見表に書いた。
住民税の基礎控除は43万円のままで、この段はない。年収ごとの住民税は住民税は年収いくらからかかるかに並べた。
懸賞金が90万円までなら、会社員は確定申告をしなくてよい
所得税法第121条第1項第1号は、給与が1か所で2,000万円以下の人は、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下なら確定申告書を出さなくてよいとする。条文は「一時所得の金額」の合計と書き、半分にする前の額で比べるようにも読めて手が止まった。
決めていたのは所得税基本通達121-6で、この所得金額は総所得金額などから給与所得と退職所得を引いた額だという。一時所得は2分の1の額で比べることになり、No.1903も同じ判断だ。No.1490のQ&Aは逆算して、90万円を超えない限り確定申告は要らないとしている。
懸賞金90万円なら半分にして20万円で、申告は要らない。91万円なら20万5,000円で申告が要る。
ただ、申告が要らないことと、合計所得金額に入らないことは別だった。所得税法第2条第1項第30号の合計所得金額には一時所得の2分の1も入り、国税庁の合計所得金額の計算についても懸賞当せん金を例に挙げる。年末調整の基礎控除は第190条で基礎控除申告書の合計所得金額の見積額で決まるので、90万円の懸賞も20万円として見積額に入る。
年収665万円の人なら、90万円で合計所得金額は508万5,000円になり、年末調整の基礎控除は67万円に下がる。懸賞金そのものに所得税はかからないが給与の所得税が3万7,800円増え、住民税の2万円と合わせて5万7,800円。91万円で申告すると所得税7万2,300円と住民税2万500円で9万2,800円になり、差の3万5,000円は、半分の20万5,000円にかかる所得税3万4,500円と住民税500円だった。90万円でこの線にかかるのは、1円刻みで年収641万6,000円から665万5,556円だ。
基礎控除申告書に懸賞金を書かずに年末調整を済ませると、年収665万円の人の所得税は正しい額より3万7,800円少なく計算される。
20万円以下でも、医療費控除などで確定申告をするなら懸賞金も書く。副業の所得で同じことが起きる話は副業の20万円ルールに書いた。
住民税は20万円以下でも申告が要る
地方税法第317条の2で住民税の申告書を出さなくてよいのは、給与支払報告書が出ている勤め先から給与を受け、前の年に給与所得以外の所得がなかった人だ。懸賞の一時所得がある人は外れ、芦屋市のFAQも額にかかわらず申告が要ると答えている。期限は翌年の3月15日で、所得税の確定申告をすれば第317条の3で住民税の申告をしたものとみなされる。
企業の懸賞は、受け取る前に10.21%引かれている
所得税法第204条第1項第8号と第205条第2号、施行令第322条で、事業の広告宣伝のために賞として払う金品は、1回の額から50万円を引いた残りに、復興特別所得税を含めて10.21%の源泉徴収がかかる。No.2813は素人のクイズ番組の賞金も例に挙げ、国や地方公共団体の交通安全の標語の賞金などは含まないとする。
100万円の懸賞なら5万1,050円が引かれる。50万円に10.21%は半分の25万円に20.42%と同じで、税率20%の人にはほぼちょうど、低い人には引かれすぎになる。
| 年収 | 100万円で増える所得税 | 源泉徴収 | 差 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 12,700 | 51,050 | 38,350多く引かれている |
| 665万円 | 81,500 | 51,050 | 30,450足りない |
| 700万円 | 51,100 | 51,050 | 50足りない |
引かれすぎの分は確定申告で戻る。気になったのは90万円以下の懸賞だ。80万円なら3万630円が引かれ、年収400万円の人の所得税の増え方は7,600円なので2万3,030円多いが、申告しなければ引かれたままになる。年収665万円の人は、申告しないと年末調整の3万7,800円と合わせて6万8,430円、申告すれば引かれた分を含めて6万1,100円だった。
車や旅行が当たったときは、いくらで数えるか
源泉徴収のための評価は、施行令第321条と所得税基本通達205-9で、株式や不動産は受けた日の価額、商品券は券面額、それ以外の物は現金正価の60%だ。現金正価300万円の車なら180万円と評価し、源泉徴収は50万円を引いた130万円に10.21%で、13万2,730円になる。旅行は、金品と選べなければ施行令第320条で源泉徴収の対象外、物品と選べれば通達205-11でその物品の価額になる。
分からなかったのは、受け取った人が一時所得を数えるときの額だ。所得税法第36条第2項は取得した時の価額とし、確定申告でも60%を使ってよいと書いた資料は、No.1490、No.2813、通達の第34条関係と第205条関係に見つけられなかった。
競馬の払戻金と生命保険の満期金は、引ける額が違う
所得税基本通達の第34条関係は競馬の払戻金を一時所得の例に挙げ、国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、引けるのは的中した馬券の購入費用だけだ。1年に30万円買い、1,000円の馬券が100万円になったなら、一時所得は49万9,000円で申告が要り、外れた29万9,000円は引けない。
生命保険の満期保険金は、保険料を払った本人が受け取ると一時所得で、No.1903では払い込んだ保険料を引ける。保険料400万円で満期保険金480万円なら、半分の15万円で申告は要らない。
ただ、特別控除の50万円は第34条第2項のとおりその年の合計から1回だけ引く。同じ年に60万円の懸賞が重なると、140万円から50万円を引いて半分の45万円になり、申告が要る。
確かめていないこと
賞与、健康保険組合、40歳以上の介護保険料、扶養家族、指定都市の住民税、医療費控除などと、確定申告の端数処理は入れていない。戻る額は数十円ずれることがある。
基礎控除申告書に懸賞金を書かずに年末調整が済んだとき、勤務先がやり直すのか本人が確定申告で直すのかは確認していない。物が当たったときに一時所得を現金正価の60%で数えてよいか、懸賞が業務に関して受けるものに当たる線、家族の名義で受け取った場合も確認していない。扶養の判定への響きは数えていない。2027年以後の分は税率も基礎控除も変わる。



